「四宮さんは、おばけとか苦手じゃなさそうですよね」
話題を変えると、四宮さんは「おばけか……」と呟いたあとで答える。
「苦手意識はたしかにない。会ったこともないし、存在しないと思っているから怖いとも思わない。テレビで見るものは全部作り物だろうしな」
なんとなく想像していた通りの返答に、少し笑う。
きっと四宮さんはこう言うだろうな、こう思うだろうな、と想像するのが最近楽しいのは内緒だ。
「本当に羨ましいです。私きっと、この先一ヵ月は夜寝る前に今日のこと思い出して怖くなると思います」
実際は幽霊じゃなかったけれど、それがわかるまでに感じた恐怖はまだ残っている。
きっと何度も思い出すんだろうなぁと先が思いやられていると、車を止めた四宮さんが私に視線を移した。
気付けばもうマンションの駐車場だった。
「俺の番号は知ってるな?」
「あ、はい。知ってますけど……」
「俺の番号が携帯に入ってると無敵らしい。いつだったか浅尾が言っていた」
真顔で告げられた言葉に、目をぱちぱちとさせてから笑みをこぼした。
浅尾さんが〝四宮副社長様の番号がこの携帯に入ってるなんてもうこれ無敵状態だよね。どこでなにがあっても完璧な解決策練ってくれそう!〟と元気な声で言っているところが浮かぶようだ。
クスクスと笑いながら「たしかにそうかもしれません」と返すと、伸びてきた手に頭を撫でられる。



