「私、塚田といいます。こちらに派遣社員として勤めていた塚田さなえの祖母です。この度は孫娘が本当にご迷惑をかけてしまって申し訳ないと思って謝りにきたのよ」

眉を下げたおばあさんに「え」と声が漏れた。
塚田さんのおばあさん……?

「あの子は学生の頃からずっとあんな感じできてしまったから、派遣会社に登録してもいつもうまくいかなくて。今回は家から近かったから、ちゃんとできてるか心配でよく見にきていたの。お仕事中迷惑はかけられないから、窓の外からだったり、通りの向こうからだったりね。こっそり眺めてたの」

それを聞いた富井さんが「あー……なるほど」と小さく呟いたのが聞こえた。

私は「そうだったんですね」と相槌を打ちながら、一番最初に幽霊なんて言いだしたのは誰だと心の中で恨む。

まずおばあさんに失礼すぎるし、無駄に怖がってしまったことも謝りたい。

「見ていたから、あなたばかりがせかせか働いていたのも知ってるわ。あの子が爪ばかり眺めて立ち上がろうともしなかったことも。今回の件も聞いたわ。迷惑かけてごめんなさいね」

「あ、いえ……」
「だから、転んだところを助けてもらった時も、私はあなたがここの受付の子だってすぐにわかったのよ。本当にこんな優しくて立派な子に対してあの子は――」

その後は、四宮さんが呼んでくれた店長も一緒になりおばあさんから話を聞いた。

おばあさんは菓子折りを持ってきていたので、こういうものは受け取れないと何度も遠慮したのだけれど引いてくれなかったため、今回に限り受け取ることにした。

おばあさんは派遣会社にも菓子折りを持って謝罪に行ったそうで、こちらには迷惑をかけないからと何度もおっしゃってくれた。

ここまでことが大きくなった一因は私にもあるので、頭を下げるおばあさんに申し訳ない気持ちでいっぱいだった。