「あまり言いたくはないが、氷室みたいなテンションの両親なんだ。勢いあまって断りにくい見合い話を持ってこられる前にと俺からも氷室に頼んだ。その辺の事情を理解してくれる女性はいないかと。まさか藤崎がくるとは思ってもいなかったが……協力してくれると助かる」

最後に「もちろん、礼はする」と言いだした四宮副社長に、顔の前で両手を振った。

「お礼なんてとんでもないです。……はい。四宮副社長がそうおっしゃるなら。私でよかったら協力します」

四宮副社長は今年で三十一歳だったはず。年齢的にも親が結婚の話題を出してきてもおかしくはない。
今まで女性の影を匂わせてこなかったのなら余計だ。

でも、そういったことは確かに巡り合わせもあるのかもしれないけれど、自分で決めるものだし、四宮副社長自身にまだその気がないのなら、私もそれでいいと思う。

だから、協力することは構わないのだけれど。

「ただ……ひとつ、お聞きしたいことが」

じっと見上げる私に、四宮副社長はわずかに不安そうに眉を潜めた。

「なんだ?」
「四宮副社長のご両親のテンションが氷室さんみたいって……本当ですか?」

こんなにしっかりとしている真面目な四宮副社長のご両親が、氷室さんと同じって……ちょっとかなり信じられない。

そんな思いから真剣に聞いた私に、四宮副社長は面食らったような顔をして……それから「ああ、本当だ」と答え、おかしそうに笑った。