「塚田さんのこと、私がもっと上手くできていればこんなことにならなかったのに……情けないです」
「そんなことはない」
「あります。しかも、カッとなって結構言っちゃいましたし……私のせいです」

すぐに言い返したからか、それとも私が頑なだからか。四宮さんは少し笑っていた。

「藤崎がそう言うなら、少しはそうなのかもしれない。だとしても、勘違いするな。一度失敗したからといって、今までの頑張りがすべてなくなるわけじゃない。藤崎が必死に頑張ってきた事実は店の全員が知っているはずだし、俺も知ってる」

四宮さんの低く艶のある声は穏やかで、心地よく耳に届いた。

「藤崎は真面目だし少し不器用な部分もあるから、傷つくことも多いのかもしれない。でも俺はおまえのそういう部分に救われてる。そのことを忘れるな」

四宮さんに塚田さんの件を知らせたのは浅尾さんだろうか。
だとしたら、浅尾さんは私がお店を出たあとに電話をかけたということになる。

四宮さんがその電話をどこで受けたのかはわからないけれど……きっと急いでかけつけてくれたんだろうということだけはわかった。

この時間帯、最寄り駅からマンションまでの大通りが混むのは先週、氷室さんからのSOSコールがあったときに知った。だから車ではなく駅から歩いてきたんだろう。

もしかしたら、走ってくれたのかもしれない。

それをなにひとつ表には出さずにただ慰めてくれる四宮さんに、胸の中があたたかくなった。


〝ありがとうございます〟と言ったらこの体温が離れてしまう気がして、なかなかお礼を声に出せなかった。