「それで塚田さんは、忙しいってことも私が要領悪いってこともわかってるのに、なにひとつ手伝おうとしてくれなかったの? そんなに立つのが面倒?」
「なに急に……っ。っていうか私は派遣だし、正社員の藤崎さんとは違うし……っ」
「派遣とか正社員とか関係なく、給料もらっている以上は、それに見合うくらいは働く責任があると思う。ただ一日中椅子に座ってネイル眺めてるだけでお金がもらえる仕事なんてない。本当にこの十ヵ月、自分の働き方になんの疑問も持たずにきたの? 周りが注意しないから別にいいって思ってたなら、それは間違いだよ」
言い切ってからハッとした。
塚田さんが真っ赤な顔をして私を睨みつけていたから。
まずい、言いすぎた……と思った瞬間には、立ち上がった塚田さんが椅子をカウンターに勢いよく押し込んでいた。
ガン!という、大きな音が店内に響く。
「藤崎さんにひどいこと言われたって上に報告します。すごく傷ついたので明日からは来られませんので! 頭下げて謝られたって絶対に許しませんから覚悟しておいてくださいね」
カツカツと高いヒールで歩いていく後ろ姿に、頭の中が真っ白になる。
派遣社員はうちの会社には指揮系統がない。だから、店長を通して派遣会社に事情を伝え、派遣会社から派遣社員に注意をしてもらわなければならなかったのに……。
直接注意をしたらダメだったのに……。
どちらの言い分が正しいとかそういう話ではなく、元々のルールがそうなのだから……今回悪いのは私だ。



