「俺と四宮は大学時代からの友達なんだよ。で、職場も俺はタイヤ関係で四宮は自動車関係だろ。同じ畑だしってことでずっと仲良くしてるってわけ」
親指で四宮副社長を指す氷室さんの手を、四宮副社長がバシッと叩き落としたけれど、氷室さんは気にする様子も見せずに続ける。
「で、今回は四宮の両親から頼まれて見合いのセッティングをしたってわけ。四宮って昔から女の影がないからか両親が心配しててさ、大学から仲のいい俺に相談してきたから、じゃあ女紹介しますよって。それがこれ」
ああ、そういうわけか……と一瞬納得しかけてからハッとする。
だってお見合いなんて急に言われても困るし、第一、その気もないのに気軽に出向いていいものでもない。相手に失礼だ。
そう思い口を開こうとした私の肩を氷室さんがぐいっと抱き寄せる。
そして、さっきまでよりボリュームを下げた声で言う。
「一度見合いでもしておけば、両親も安心するだろうって四宮も今回のことには賛成してるんだよ。安心しろ、四宮にもその気はないし、両親の肩の荷をひとつ下ろしてやるためのもんだ」
耳元で告げられる。
「で、でも、ご両親を騙すことになりますし……」と困っていると、一歩私に近づいた四宮副社長に気付く。
見上げるとすぐに視線がぶつかった。



