これが最後ですよ





先輩。


私は先輩とふざけたりするの楽しかったんですよ。


佐藤先生のヅラ疑惑を徹底調査する記事とか、
学校近くでよく見かける猫の生態を調査した記事とか、
告白しては振られまくる3年生に直撃インタビューした記事とか、


部員や先生に怒られたりもしたけど

ほんとに全部楽しかったんですよ。


先輩と笑い合えるだけで、私は満たされてましたから。

なんでもできる気がしてました。




「……こちらこそです」


「これからの新聞部は佐竹に任せた」


「お任せ下さい。先輩の意志を引き継いでみせます」


「おー、頼んだ。佐竹なら安心だ」




ぽんぽんと肩を叩かれて、一瞬心臓が跳ねる。



ふと思うんだ。


先輩が引っ越すのが今じゃなくて、あと1年先だったらって。

3年生になったら、先輩も受験で部活引退するだろうし学校ですらほとんど会わなくなる。


だからそのタイミングで引っ越すんだったら、結局一緒のようなもんだし。



……だってさ、

あと3年も先輩がいない学校に通わないといけないんだよ。


部活だって、もう次行った時には先輩はいない。

……無理だよそんなの。




「俺向こうではテニス部入るかバイトするわ」


「テニス?好きなんですか?」


「うん。あと俺中学の時テニスしてたから」


「へぇ……意外です」


「俺はこう見えて運動神経良いからな」




得意気に言ってみせる先輩。


……知ってますよそんなこと。

体育祭の時、リレーでアンカー走ってましたし。


かっこよかったですよ。