――そうして私達は2人揃って学校を後にした。
先輩は校門を抜けるまで、名残惜しそうに「サラバだぁ〜」と嘆いていた。
「先輩って何駅までですか?」
「東駅」
「あぁ、じゃあ私は西なんで、駅まで一緒に行きましょう」
「おう」
てくてくと肩を並べて先輩と帰る。
考えてみれば、先輩とこうして2人で帰るのなんて初めてだ。
お互い友達と帰ってるから。
でも、結局これは最初で最後。
「先輩、向こうで彼女できますかね」
「ん〜?あぁ、できればいいけどなぁ〜」
できればいい?
先輩だったら「できるに決まってんだろ!」って言うと思ったのに。
変なの。
「……できますよ、先輩なら」
「そう?お前が言うならできるかもな」
「え、なんでですか」
「なんとなく。素直様のお言葉だから?」
素直様……?
なんだそれは。
歩きながら、私は隣の先輩を見上げてみる。
先輩はずっと辺りを眺めながら歩いていた。
部室でも窓の外を眺めてたし、
ほんとに名残惜しいんだろうな。
そんな先輩を見てると、胸の奥が締め付けられる感覚に陥る。
「この道さぁ、小学校の時に友達と追いかけっこしててさ、傘持ってたんだけどその傘が見事にマンホールにぶっ刺さっちゃってよ」
「えぇ」
「ほら、よく傘を杖みたいにしながら歩くじゃん?走りながらでも無意識にやってて、そしたら刺さって思いっ切り転んだんだよ」
「痛そう」
「くっそ痛かったなぁ〜。両膝血まみれ。
それから俺は傘を杖のように地面につけることはしなくなったね」
「なんか……小学生の先輩も先輩らしいですね」
「おい、また馬鹿にしただろ!そうやって学んでくんだよ子供は!」
「あははっ」
私はムキになる先輩を見て余計に笑ってしまった。
小学生の先輩かぁ。
絶対クソガキで、可愛かったんだろうなぁ。
私も見てみたかった。

