先輩はきっと知らない。
私が本当は素直な性格じゃないことを。
「千葉ってどんなとこだろーな」
「先輩ならどこででも上手くやっていけそうですよね」
「……なんか上から目線なの腹立つ。けど、まあ俺だしな。向こうでもあっという間に人気者だわ」
「こっちで人気者だったんですか……?」
「おい!その痛い人を見るような目をやめろ!」
ぎゃーぎゃー喚く先輩に思わず笑ってしまった。
何気ない会話。
でも全部、〝この町で過ごすこれから〟のことじゃない。
私の知らない場所で、私の知らない人達と過ごす未来のことだ。
そう思うと、まだここにいる先輩がものすごく遠くにいるような気がしてくる。
実際、遠くに行っちゃうんだけど。
「……そういえば部長、泣いてましたね」
「ああ、泣いてたな。部長は優しかったし、こんなアホな俺の面倒良く見てくれてたし……ほんと感謝してる」
先輩がいる最後の部活の時に送別会をした。
部長はよく頼られるような人で、
ふざけてばかりな私と先輩のこともあまり怒らずに見守ってくれていた。
感動するとよく泣くタイプらしく、先輩の送別会ではぼろぼろ涙を流してて。
つられて他の部員も泣いていた。
私は……泣きたくなかった。

