「はぁ〜、今日でこの部室ともおサラバか〜」
「……そうですね」
「俺の記事、好評だったのに……皆に悪いなぁ」
「先輩の記事が好評だったなんて聞いたことありませんけど」
「おい!そこは嘘でも『そうですね』つっとけ!」
「えぇー」
「お前はほんとに失礼な奴だな。素直過ぎなんだよ」
あはは、と笑う先輩の顔を見つめる。
〝素直過ぎなんだよ〟
先輩によく言われた言葉だ。
入部して、それを先輩から言われて、初めて自分が周りから見て『素直』と思われてることを知った。
「そういえば俺と佐竹でふざけた記事書いたことあったよな」
「あぁ、先生にすごく怒られたやつ」
「そーそー!あれはあれでまたやりたかったなぁ」
窓の外を眺める先輩の目は、遠くを見つめているようだった。
……そうですね、先輩。
私もまた先輩とあんな風にふざけた記事書きたかったです。
「先輩」
「ん?」
「寂しいですか?」
しんと静まり返る部室。
先輩は窓の外を眺めたまま動かなかった。
いつも先輩は、誰かと一緒にいた。
友達が多くて、アホだけど好かれる存在で、
周りにはいつも……人がいた。
だから、私が先輩とたくさん話せる時間は……この部活しかなかった。

