「うわ、俺のノートこんなところにあった!」




ガサガサと部室の棚を漁りながら先輩は声を上げる。


今日は夏休み前の終業式があった。

なので明日からは夏休みとなる。


そして目の前で部室を散らかす先輩は、夏休み中に引っ越すらしい。

つまり先輩と会えるのは今日で最後になる。




「なんのノートですか?」


「化学のノート。俺ずっと探してたんだよな〜」


「……今日見つけても意味ないですね」


「ほんとにな」



はぁ、と溜息を漏らしてノートをパラパラとめくる先輩。


部室には私と先輩の2人きり。

もちろん今日は部活がない。


なのになぜ私達がここにいるかと言うと、

忘れ物を取りにたまたま部室に寄ってみた私。

そこにはなぜか先輩もいたわけで。


なんとなく、今に至る。




「俺の字きったねぇ〜」


「ちゃんとノートとってるんですね」


「あ、今馬鹿にしただろ!これでもノートだけはちゃんととるんだよっ」




ノートだけは、って。

成績はその努力についてこないってことなんだろうな。


先輩らしい。




「ま、いーや。とりあえず持って帰ろ」


「……」


「そういや佐竹(さたけ)の忘れ物ってなんだったわけ?」


「え」



私は椅子に座ったまま先輩に顔を向ける。

先輩はノートを鞄にしまっていた。




「……マーカー入れてたポーチです。夏休み入るし、持って帰ろうと思ってたのに前忘れてて」


「あーね。お前めちゃくちゃペン持ってたもんな」


「先輩はまるで自分の物のように使ってましたよね」


「そんだけあるんならいいだろ」



得意気に笑う先輩を少しだけ睨む。


……まぁ、別にいいんだけど。