「佐竹……」
きょとんとしている先輩。
私は恥ずかしくて思わず目を逸らしてしまった。
……絶対「らしくない」って思ったよね。
私も思う。
でも、これが私の本音だ。
私はきっと先輩を忘れない。
だから、先輩も私のことを忘れないで欲しい。
どうか〝良い後輩〟な佐竹を……覚えてて下さい。
「おう、忘れるわけねぇよ!」
先輩はぐっと親指を突き出してみせた。
私はそれを見て、ふっと笑みが零れる。
先輩らしい。
……良かった。
そう言ってくれただけで、もう満足です。
と、
「――っ!」
突然先輩に引き寄せられた私。
そのまま先輩の懐に飛び込んで、思いっ切り抱き締められた。
?
??
……?????
「え……」
ここは駅のど真ん中。
絶対注目浴びてる。
そして私の頭はパニックで情報の整理が間に合ってない。
「……」
先輩は何も言わず、ゆっくり私を解放してくれる。
私はそんな先輩を呆然と見上げることしかできなかった。
やばい、体中から熱を発してる。
「うわー、顔真っ赤じゃん」
「……!」
私の顔を見て吹き出す先輩に、私は余計に顔を赤くさせた。
嬉しそうに笑う先輩の顔も真っ赤になってる……って、言えなかった。
私はそれどころじゃない。

