彼はひとり暮らし。わたしは彼の隣の部屋。わたしはひとり暮らしじゃなくて、だけど両親は仕事で家を空けることが多くて。ひとりの空間で、薄すぎるくらいの壁越しに、彼の鼻歌を聴く日々。 「ただいま」 1歳年上のハルキくんは、時折。 据わった目で、わたしの首をみつめる。 「おかえりー」 わたしは、気がついていないふりをして過ごすだけ。