「その、"当たり前のこと"を何でもないことのように出来る人なんて、今そんなにいない。少なくとも私の周りじゃ忠志さんしか、いないんです」
信じられなかった。
だけど、一向に自分の意見を曲げようとしない彼女に、少しずつ少しずつほだされていく俺の心。
「俺もね…一人なんだって思ってた。世界なんて自分以外で完結してると思ってた。だからかな…今朝キミを助けた時、なんだかキミが抱えているものが、少しだけ見えた気がしたのは…」
「そう、なんですか…?」
「うん」
温くなったコーヒーに口を付けて、俺はふっと笑った。
「でも。まさかなぁ…。キミにそんな風に思われてた、なんて」
照れ臭くて、ぐっとカップを傾ける。
顔がほてっているのは、きっと自分も…彼女に想いを抱きつつあるからかもしれなかった。
「こんな、おじさんでもいいの?」
「もう…忠志さんはおじさんじゃないでしょう?8個くらいの差じゃないですか」
「それでも、十分おじさんには変わらないけどね」



