「あ、危ないじゃないですか!」
「あちらを見てみろアリシア殿」
文句を言うアリシアをよそに、カイは楽しそうに少し遠くを指さす。
その指の先には……
「海!」
深い青からエメラルドグリーンへとグラデーションのかかった美しい海と、真っ白い砂浜。
初めて目にするその光景に、アリシアは感動で言葉が出ない。
「グランリアではなかなか見られない光景だな」
いつの間にかアリシアたちのそばに来てきたイルヴィスがそう言って眩しそうに目を細める。
「時間に余裕があるし、近くに行ってみないかとカイが」
「ぜ、ぜひ行きたいです!」
コクコクと何度もうなずくと、イルヴィスはおかしそうに笑いながらアリシアの頭を撫でた。
「貴女なら間違いなくそう言うだろうと思った」
「だって!」
そんな機会なんてめったにない。
「ならば決まりだな!早速海岸まで行こう!馬車は入れないから少しばかり歩くことにかるが構わないか?」
「もちろんです」
アリシアは力強く返事をする。もう少しも眠気はない。