そういえば、先程から何故か頭がぼんやりとしている。

 それに身体も妙に熱い。紅茶に入ったスパイスのせいかと思ったが、果たしてここまで熱くなるものなのか。

 じんわりと出てくる汗の量は次第に増えていっている感じがあり、手には上手く力が入らないような気がする。



(何なんだ……?)



 乱雑にティーカップをテーブルへ置き、手を握ったり開いたりして動かしてみる。



「イル様?」



 目の前のディアナがこちらをじっと見つめている。

 その表情に、どこか違和感がある。

 彼女はこんな風な目をしていただろうか。何故、そのように微笑を浮かべているのだ。



「ディアナ……」



 一つの可能性に思い当たった。

 シャツの袖で額に浮いた汗を拭い、熱い息を短く吐き出す。

 普段ならば確証もないのにこんなことは言わないだろうが、このぼんやりとする頭では上手く考えられず、イルヴィスは考えた可能性をそのまま口にした。



「ディアナ……この、紅茶に、何を……混ぜた……?」