「シロちゃーん」

「おぅ…掃除当番終わったか?」

「うん!でもゴミ箱重かった…」

「ばか、そーゆー時は俺に言えって」

「えー?だってだって近くにシロちゃんいなかったし…」


と、俺の横に並ぶ美登。
ふわりと、香ってくる微かな香水の香りにも、この距離にもドキドキと心臓が波打つ。



気にしない。

気にならない。


そう言い聞かせて、隣をなるべく歩調を合わせて歩く。
他愛もない会話をしながら、偶に目線を落とすと、そこには必ず美登の笑顔があって嬉しい。


「ねぇーねぇー?シロちゃん!このままあんみつ屋さんに行かない?」

「………」

「行こ?…ね?」



こんの無自覚小悪魔め!
そんな顔されたら、ぎゅっと抱き締めて掻っ攫いたくなんだろーが!


けれども、所詮ヘタレな俺は、美登にだけには嫌われたくなくて、平静を装って、



「わーったよ。行けばいいんだろ。その代わり美登のオゴリな」

「えぇー!?やだー!」


本当は、俺だって怖い。
美登がいつか、俺の隣からいなくなる日を考えてしまうと。


いつか…そんな日のことを考えてしまう時間が。