【短】1人で泣くんじゃねぇよ


ガラリっ


いくつかの空き教室を探して、行き着いたのは三年のフロアにある家庭家準備室だった。


「美登?!」

「…!シ…シロちゃ…」


あぁ、やっぱり。
教室の隅っこで小さくなって、両足を抱えていた美登は涙声で俺の名前を呼んだ。


その声には驚きも混ざっていたけれど、安堵の方が大きいように思える。


「何、逃げてんだよ?」

「そ、そんなんじゃないもん!」

「じゃあ、なんで一人で泣いてんだよ」

「…こ、これは、涙じゃないもん!汗だもん!」

「ばぁか。クーラー効きまくりの校内でそんなに汗なんかかくかよ」

「…っ」


きゅっと噛み締められた美登の口唇がやけに愛しくて、キスをして懐柔してしまいたい衝動に駆られるけれど、一握りの理性でなんとかそれを制する。