サトリ「ふふっ………。
    やはりあの方の言った通りだ。
    どうやら九尾と知り合いのようで
    したね。」

「な…何で?」

私は胸にナイフが突き刺さったように
痛み出した

(結局、人と妖怪は相容れないものなの?
 せっかく仲良くなれたのに…。)

キョウヤ「……………。」

キョウヤは何も言わずに狐火を灯し
私に向かって飛ばしてきた

「ううっ。なん、で?」

私は必死に涙をこらえながら数珠で避けた

(今は泣いてる暇はない、
 とにかく逃げることに専念しないと!)

春夜も深い怪我を負ってしまったので
出すことが出来ない

自分でなんとかしないと…

どんどん深い所まで逃げていく

(でも、なんでキョウちゃんは何も言って
 こないの?後ろめたさで言えない?)

またもや狐火を飛ばしながら追いかけて
くる

気のせいか街からどんどん離れた場所まで
追い詰められてる気がする

さらに最悪なことが続いていった

(ここから先は崖……。まずい。)

後ろを振り向くとキョウヤは立っていた 

(どうして?やっぱりそこまで人間が
 憎いの?)

「ごめんね?キョウちゃん。
 元々人間が嫌いなのに人間と暮らせる
 わけないよね?」

キョウヤは相変わらず何も話さない

話したくないほど憎いのか

私に狐火を放った

「きゃあっ!!!」

私は狐火に包まれ、崖から落ちた

(あ、私このまま死んじゃうのかな?)

全てを放棄して目を閉じた

しかし地面には落ちることはなかった

(え?私どうなったの?)

ゆっくりと目を開けてみる

キョウヤ「おい!お前すぐ戻らなかった
     のか!
     あれほどすぐ家に帰れよって
     念押ししたのに。」

「何で、キョウちゃんがここにいるの?
 馬鹿じゃないの!!
 裏切っといて今更私を助ける気?」

キョウヤ「は?馬鹿なのはお前だよ!
     てか裏切ったってどういうこと
     だ?」

(キョウちゃんはホントに分かってない
 ようだ。そしたらあのキョウちゃんは
 誰だったの?)

キョウヤ「ちっ!今はまだ妖術使えねー
     んだよな。どうすっか。」

キョウちゃんは私を抱っこしたまま崖を
落ちていってる

(どうしよう、このままじゃ私もろとも
 地面に叩きつけられてしまう…。) 

ふと下を見ると春夜が待機していた

(春夜!!)

春夜は勢いを付けると私達に向かって
飛びついてきた

そしてキョウちゃんの服を咥えると地面に
ゆっくり着地した

「春夜、春夜!無事だったんだ。
 ごめんね、こんな怪我させて…。」

「クゥン………。」

キョウヤ「その犬っころ、そうとう
     お前に懐いてるんだな。」

「うん、春夜は私が最初に契約した
 妖怪だもん。10年位の付き合いだよ。」

キョウヤ「そいつが俺のこと呼んで
     きたんだよ。お前が危険
     に晒されてるてるってな。」

「!!そうだったんだ。ありがと春夜。」

春夜は嬉しそうにすり寄った

キョウヤ「それはそうと裏切ったって
     どういう事だ?説明しろ。」

「あのね………。」

私は森の中であったことを全て話した

キョウヤ「そうか…。」

「私の考えだけど、キョウちゃんが
 怪我していたのと繋がっているんじゃ
 ないかって思うんだけど…。」

キョウヤ「ありえるかも、な。」

キョウちゃんはしばらく考え込んでいた

キョウヤ「とにかく追いかけてみる。
     お前は先に帰ってろ。」

「嫌だ。キョウちゃんのことを怪我させた
 奴らだったら、またキョウちゃん
 次は、もっと酷い目にあうかもよ?」

キョウヤ「お前はただの人間なんだ。
     先に帰ってろ!」

「キョウちゃんは今まで私の事
 名前で呼んでくれないんだね。」

キョウヤ「なんだよ急に…。」

桃子は悲しそうな目で見つめていた

キョウヤ「…分かった、すまねぇ…。」

「それにそのままじゃキョウちゃんの
 力は最大まで引き出せない。
 そこで提案があるんだけど。


 私と契約しない?」

キョウヤは固まっていた

「もちろん無理しなくてもいいよ。
 キョウちゃんが決めて。
 でも良い案じゃない?
 私は守られる。そしてキョウちゃんは
 自分に怪我させた奴を見つけることが
 出来る!
 お互いに得がある。」

その言葉を聞きキョウちゃんはニヤリと
笑った

キョウヤ「っ、腹黒い奴だぜ。
     契約するしかないじゃん。」

私は式神を取り出しキョウちゃんに名前を
書かせた

そしてその紙に私は自分の血を垂らした

(すごい力!やっぱりそこらの妖怪や
 霊とは比べ物にならない…。)

するとみるみる内にキョウちゃんは
半人半妖の姿となった

月に映える美しい銀白の毛並みと
鋭い赤い目をしている

(す、凄い…。本物なんて初めてみる。)

私は妖怪は春夜しか見たことがなかった
ので、とても驚いていた

キョウヤは私の前で跪くと

キョウヤ「あなたに命を預けます。
     我が主、。」

私はキョウちゃんの変貌ぶりに
呆気にとられていた、そうしていると

キョウヤ「何してるんだ。早く追いかける
     ぞ!」

私はキョウちゃんに抱き上げられながら
また森の中を入っていった

(そうだ、時間はない。
 逃げられる前にはやく…。)