「はあっ…!やっと見慣れた場所まで着い
 た、かな?」

私は2時間をかけてやっと自分が住んでいた街まで辿り着く

それでも途中で見つかりそうになったので
人目のない所で春夜に連れて来て貰った

(ここまで来れば流石に平気…。)

家までの道を淡々と進んでいく

そして家が見えてきた

「やった!帰ってこれた…って!」

何と家の周りを怪しそうな人が数人うろついていたのだ

(は?ここまで追っ手が来た?逃げて…)

踵を返そうとしたが、運悪く気づかれて
しまった

…「おい、あの娘じゃないか?
  早く捕まえろ!」

私は撒くべく全力で走り、路地裏の角で
曲がり身を隠した

顔を覗かせ様子を見ていた

…「あの小娘を捕まえれば
  …力が貰える!」

…「ひひっ…チカラ、強い力だ。」

(“あの方”関連だったわ。も~う…
 まじ最悪だ。)

2つの団体から逃げなければならないという危機的状況で精神が削られそうだ

(皆は多分、捕まってなさそうだね。
 良かった。じゃあ一体何処に…?)

考えにふけこんでいた時…

…「やぁ、お嬢さん。こんな所でこんな時
  間に1人で居たら危ないよ?」

後ろを振り返るとフードを深く被っている
男の人が立っていた

私は急いで立ち上がり、逃げようとしたが

…「あれ、逃げちゃうの?せっかく送り
  届けてあげようと思ったのに。
  “あの方”の所まで…ね。」

春夜を呼び出そうとしたがいくら呼びかけ
ても出てこなかった

「なんで?春夜、早く出て来て!」

…「無駄だよ。力は止めさせて貰ったから
  ね。大人しくしてくれないかい?」

怪しい男はゆっくり此方に歩いてきた

走り出そうとしたが足は進まない

まるで金縛りにあったように動けなくなっていた

…「ククッ…これで、やっと俺は強くなれ
  るぞ!」

男は嬉しそうに高笑いを始めた

「やあっ!離して、離して!」

いつも保っていた冷静を失い心臓はバクバクと鳴り止まない

…「“あの方”もさぞお喜びになるだろう。
  さぁ、早く行くぞ…。」