蒼葉「あぁ、有珠<ゆず>ありがとう。
   お疲れ様。」

有珠「いえいえ、これ位どうって事ない
   ですよ!あれ、お客様ですか?」

蒼葉「この娘は有珠、ここで世話してやっ
   てるんだ。」

有珠は近いてくると、丁寧にお辞儀してきた

有珠「いらっしゃいませ。どうぞゆっくり
   していって下さいませ。」

敬幸「おう、どうも。」

勇吾「…うっす。」

蒼葉「さて…キョウヤ、話しは聞かなくて
   いいのかい?」

いつの間にか出入り口にいたキョウヤは体を強ばらせ、冷や汗を流す

キョウヤ
  「あ、えーと、そうですねー。少し
   外の空気を吸いにー?」

有珠「はっ!…その輝かしいお声は…。」

そう言うと有珠はキラキラした目で振り向いた

有珠「キ…キョウヤ様ーー!!」

キョウヤ「ひぃ!くっ、来るなー!!」

青ざめるキョウヤを有珠が襲いかかる

外に急いで出た後にキョウヤの断末魔が
響いてきた

敬幸「あ~っと…これは?」

蒼葉「ちょいと前にね、有珠がまだここで
   働いて間もない頃どうやら嫌な客に
   絡まれてた所をキョウヤが助けて
   くれたらしくてさ。どうやら
   一目惚れらしいんだよ…。」

やれやれと呆れたように息つく

勇吾「ふ~ん…、先生にしてはやります
   ね~。」

敬幸「アホらし…。」

蒼葉「キョウヤ!ふざけていると、本当に
   情報を教えてあげないよ!」

蒼葉は再び資料をめくっていく

蒼葉「いきなりだけど、恐らく連れていっ
   た組織はもう摑んでたの…。
   表向きでは唯のホステスだけど、裏
   はマフィアのボス、瞭祐。」

キョウヤ
  「は…?おい、蒼葉!瞭祐ってまさか

有珠にしがみ付けられながら此方に迫って
来たキョウヤは驚いていた

キョウヤ
  「あいつ、何のために!?」

蒼葉「さぁね…目的までは分からない。」

敬幸「その、瞭祐って奴は誰なんだ?」

蒼葉「まぁー昔馴染みってやつかね。そい
   つも妖怪だよ。螭《みずち》妖怪」

勇吾「みずちって蛇みたいな妖怪だっけ?
   確か絶滅寸前って聞いていたが…」

蒼葉「そうだねぇ…今じゃどの種族の妖怪
   も絶滅寸前だけどね…。その中じゃ
   特に水辺に住む妖怪は希少だ。」

敬幸「俺らみたいなのは平気な方だがな」

キョウヤ
  「それより瞭祐、あいつはヤバイ奴
   だ…。早く探さねーと!」

蒼葉「落ち着きな、今探してあげるよ。
   有珠、居場所を頼むよ。」

有珠「キョウヤ様の為なら喜んで!
   特定しますね!」

そう言うと何処からか大きく古びた鏡を
持ってくると準備をしていた

有珠「私の雲外鏡の力に掛かればどんな所
   も特定出来ますよ!アッハッハ!」

蒼葉「はいはい、頑張ってね。」

勇吾「あのー
   先生達はどういった繋がりで?」

蒼葉「何百年か前に人間と妖怪の戦争が
   起こってね、それに私達が参戦して
   た繋がりだよ。まぁ…結局妖怪が
   ほぼ負けてしまったけどね。」

キョウヤ
  「俺達の仲間も術者達に服従されて
   連れて行かれた奴もいたな…。
   実験に使われるのが嫌なもんで死ん
   でいったんだ。」

敬幸「確かにその時代が特に縄張り争いが
   多かったな。」

勇吾「ふーん、俺が生まれる前かー…。」

蒼葉「色々つらかったねぇ…。」

悲しそうに俯く蒼葉は有珠が調べ終わる
までの間、ポツポツと昔話をした