「あ~あっ!久しぶりのカラオケ。
 楽しかった~!」

明音「急にごめんなさい、誘って。」

「ううん。楽しかったからいいよ。」

紫苑「それにしても上手だね、桃子ちゃん
   の声。素敵だわ~!」

「えへへ?そうかなー?」

紫苑「私なんて下手過ぎて80点ぐらいしか
   取れてなかったよ~。」

明音「紫苑…。聡に比べたらどうって
   ことないわよ…。」

「あっ…、そうだね…。」

聡は音痴…っていうレベルじゃない位の
もうそれこそ騒音レベルの歌声の持ち主
なのだ…

紫苑「え?何それ?逆に聞いてみたい。」

私達はそんなたわいもない話をしながら
家路を辿る

明音「それじゃあまた明日ね。」

紫苑「バイバイ~!桃子ちゃん!」

「うん、バイバイ!!」

私は2人と別れ、暗くなった夜道を歩く

(ふんふふーん。楽しかった~!)

私は鼻歌を歌いながら歩き出す

勿論霊が見えているが私は全然怖くなかった

桃子はもっと怖い光景を見ているので
耐性がついてしまったのだ

(我ながら嫌な耐性がついたもんだ…。)

そんな事を考えているとふと
山道に続く道の出口に大きな桜の木が
立っていたのだ

「あ…綺麗な桜。」

私は舞い落ちてきた桜の花びらを
キャッチした

(皆は桃と桜の花は見分けがつかないけど
 私は分かるんだよね~。)

桜の木へと近づいていく

(ここだけ空気が違う?
 それに霊も見えない…。)

何とも不思議な雰囲気である

と、その時風が吹き抜けていった

桜の花びらは町中に吹き飛ばされていく

(桜…、この香りって懐かしい気分に
 なる。誰かの香りだったような
 気が…。)

…「よう、お嬢さん。こんな夜に1人で
  危ねぇぞ?」

誰かの声が後ろからしてきた

「!?」

私は一歩ずつ後ずさる

…「そんなに警戒しなさんなって…。」

声の主が月の光と共に現れる

その男は翡翠色の瞳を面白そうな表情で
私に向けてきた

どこか妖艶なオーラを醸し出す男の私の
第一印象は

(綺麗……。人間じゃないみたい。)