「刺さった。初めて刺さった。」

初めて動くものに当てることが出来て
嬉しがっていたが…

(あ、そういえばここは空中…だよね?)

てことは私も?

「そりゃ落ちるよね!わぁぁーー!」

(いやぁ~っ!こんなことで死ぬの!?)

しかし私は地面には当たらず

敬幸「お前バカか!自分の事も考えろ!」

「ごっ、ごめんなざい…。」

私は混乱して涙が溢れてくる

敬幸「そこまで泣かなくても…。」

「トシーっ!ありがどう!!」

トシの服に擦り付けるように顔を胸にうずくめる

敬幸「おいいっ!
   汚ぇよ、俺ので拭くんじゃねぇ!」

「ズビッ。あぁ…ごめん、ごめん。」

敬幸「…もう無茶するんじゃねぇぞ?」

その言葉にコクンと頷く

「そういえば、暁継はどうしたんだろ。」

敬幸はゆっくりと地面に着地する

敬幸「もしかしたらまだ生きてるかも
   しれねぇな…。まだ注意しろ。」

トシはまだ私を抱きかかえながら辺りを
見回す

暁継「くそっ…どうして、だ…。」

暁継が茂みからゆっくりと出てきた

敬幸「やっぱりまだ生きてたか。」

暁継は私をジッと見ている

暁継(あの目はっ…、まさか!?)

「もう止めにして、降伏しなよ。
 こんな事してても意味がないよ。」


暁継の回想


暁継「本当に力を貸してくれるんだな。」


…「貴方が俺達の下に付いてくれる
  って言うならね。」

暁継「はぁ?貴様、この儂をバカにして
   おるのか!そんな話は聞いて
   いないぞ。ただ鬼族と手を組む
   としか…。」

…「あれ、ちゃんと話聞いてなかった
  のかな?それともあいつちゃんと説明
  してなかったのかー。」

あの時の目は今でも忘れられない

…「鬼族が誇り高いことは分かってるよ。
  俺も尊重してるしね。ただね…



  貴方はもうそこまでの力がないんだ。
  本当だったら俺達に任せて欲しかった
  んだけどね。どうしても動きたいなら
  任せるよ。」

男は暁継の前まで近づいていく

…「まーこんな事しても意味無いと
  思うけどね。精々頑張りなよ?」

冷たく、濁った白い目で嘲笑うあの目…

ー回想終了ー

暁継「どいつもこいつも、儂の邪魔を
   しおって!カギ共がっ!
   長年生きる鬼を貶すなーっ!」

暁継は刀を持ち、狂ったように攻撃をする

敬幸「ここで片を付けよう…暁継。」

敬幸は向かってくる暁継に呪符を飛ばす

暁継「がっ!離せーっ!!」

敬幸「あの世で反省してろ。」

敬幸は刀を構え猛スピードで暁継の首に
斬りつける

今度こそ首は落ち、倒れていく

「お…わったのかな?」

敬幸「あぁ…、でもまだ集落に鬼が…。」

…「俺が片付けといたぞ?それで提案だ」

「誰だ!?」

…「まぁ、そう怒るな。
  俺は秋真<あきさな>ってもんだ。」

謎の男は黒い布を全身に被っている

「お前、まさか雲蓮を助けてった…。」

私は男に向かって弓を構える

秋真「待て待て、嬢ちゃん!
   確かに俺は“あの方”の仲間だが、
   今回はもう嬢ちゃんには何も
   しねぇよ。」
  (この呼び方で合ってるよな。)

「じゃあどうしてここに…。」

秋真「“あの方”に付いて来たほうがいい。
   お前さんの力は異常すぎる。
   もしかしたら“あの方”なら戻して
   くれるかもしれないぞ?」

「だからって…。」

秋真「嬢ちゃんも他の妖怪共救ってるのは
   いいが、たまには自分の事もちゃん
   と考えろ。もしその力が他に迷惑を
   かけていくとしたら…どうだ?」

「!?」

私は嫌な事を言われ、動きを止める

「私は…。」

…「秋真さん。やっぱり甘いですよ。
  強制的に連れて行くしかありません」

同じ黒い布を纏った何者かが現れた

木から落ちてくると私に駆け寄ってくる

「嫌だ、お前らとは行かない!」

私はその人に向かって矢を放つが避ける

…「ワガママですよ。我々とついて行く。
  それが貴方の使命なのです。」

私は逃げていく、しかし体力がきれていた
のか足がもつれてしまった

…「さぁ、大人しくしてて下さい。」

その瞬間、その人の布が剥がれ落ちる

敬幸「桃子がお前らとついていく権利は
   無い。
   何が使命だ?操り人形が…。」

トシは刀を突きつけていた

秋真「止めろ、百香<ももか>!
   俺達は争いに来た訳じゃねぇんだ。
   ったく面倒事はごめんだぞ。」

百香「あなた…邪魔ですね。」

百香と呼ばれた女の子は額に目がある

敬幸「百目鬼か。確か絶滅寸前の種族
   だったな…。」

百香「私の主の命令は絶対果たすのです。
   さぁどけ!」

(この子も“あの方”に使われて…。)

百香はまたもや攻撃をしてくる

トシが段々押されていく

敬幸「くっ…!はぁはぁ。」

(どうしよう…。私もトシも体力の限界
 キョウちゃん…、助けて。)

その瞬間1枚のお札が光り出す

敬幸「がぁっ!!」

百香「大人しくしていればこんな目には
   合わなかったのです。」

百香は留めをさそうと刀を振りかざす

しかしその刀は弾き返されてしまった

キョウヤ
 「おいおい、そんなもんなのか?
  烏はカァカァ時間を知らせて鳴いて
  ればいいんだよ。
  ここは天下の九狐様に任せときな?」