それから修行は3日ほど続いた

「はぁはぁ…。」

寛幸「よし、大分板についてきたよう
   だな。今日は肝心の術について
   考えよう。」

「はい。私、普段はこの数珠で戦って
 います。」

寛幸「なるほど…。中々強いな。
   ん?この数珠…どこかで?」

「師匠、これが何か?」

寛幸(いや、まさかな…。)
  「いや、何でもない。
   それより確かにこれだけじゃ
   精々防ぐ程度だな。」

「はい…あとは式神のようなものを
 使っています。」

寛幸「式神も中々いいが…。
   桃子は刀、竹刀を使ったことが
   あるか?」

「いえ、ありませんが…。」

寛幸「まーそうだな…。
   でも試しに使ってみなさい。」

「はい。」

私は師匠から受け取った竹刀を扱ってみる

寛幸「やはり、筋はいいが難しそうだな」

(ん~。私も何かしっくりこない…。)

「あ、そうだ!師匠、私弓なら
 扱ったことありますよ!」

寛幸「弓か…。なるほど、それも良いな。
   ではやってみなさい。」

次に私は弓を貰い、実演してみせる

私は中学生までだが弓道をしていたのだ

県大会優勝なのでまぁまぁな実力だろう

私は100m先の木に目掛けて矢を放つ

見事に当たった

寛幸「刀よりは扱いが良いな。」

「この位は出来ます!」

私がどや顔をしているも…

寛幸「だが動いているものを当てることも
   出来ないとダメだぞ?」

「あ…ははは、ソウデシタ。」

動いているものは中々出来ない…

応用で一回試したことがあるが全然
出来なかったのだ

寛幸「よし。では今度は動いているものを
   弓で当てる練習をするぞ!」

そして夕方まで特訓は続いた…

敬幸「…、体中の傷の次は指の傷か?」

「………。」

敬幸(もはや返事する気力も無いのか。)

桃子は指の傷に治療をしようと夢中に
なっている

「いっ!たあ…。」

しかし指がボロボロ、血があちこち出て
きていて上手く出来ないでいた

敬幸「ったく…、おら、貸せ。」

敬幸は器用に指の治療をしていく

「あ、ありがとう。」

私はトシが作業するのをぼーっと見つめる

「トシって…、なんかお母さんみたい。」

敬幸「ブフォーッ!!」

あまりの発言に思わず吹き出す

敬幸「おま…急になんだよ!」

「あ、ごめんごめん。あまりに器用だし
 私のお母さん思い出してさ。」

敬幸「あぁ…そうか。」

「でもキョウちゃんも仕草がお母さん
 っぽいからなー。
 トシとキョウちゃん似てるかもね?」

敬幸「それだけはない!
   あいつと一緒にするんじゃねー!」

「えー?そうかなー?」

桃子が楽しそうに笑う

その表情に敬幸も思わず笑みがこぼれる

「あ!トシが笑ってるところ何気に初めて
 見たかも!」

敬幸「あ?笑ってねーし。」

「いやいや。完全に笑ってたね。
 もっと笑顔でいればいいのに。」

桃子が敬幸の頬を摑み伸ばす

敬幸「うっせぇ!笑ってねーよ。
   てか、お前いてーよ!」

2人で揉めていると…

寛幸「ははは!敬幸も仲が良いな。」

キョウヤ
  「おーい?お前ら何イチャついて
   るんだ?桃子もそんな変態から
   離れなさい。」

敬幸「イチャついてねーよ!」

「私もう眠いから寝るね。
 おやすみなさーい。」

寛幸「ゆっくり休みなさい。
   明日も修行だからね。」

キョウヤ
  「おい!話の途中だぞ!
   はぁ…、ったく。
   とりあえず変態は燃やす。」

キョウヤは敬幸に向かって狐火を投げる

敬幸「あちち!何すんだ、クソ狐!」

敬幸も呪符を投げつける

キョウヤ
  「あっぶね!お前こそ何するんだ!」

寛幸「おや?九狐殿とも仲が良いのか。」

キョウヤ・敬幸「「よくねぇ!!」」

寛幸「まぁまぁ、それより。
   あのお嬢さんは確かにただ霊感が
   良いだけじゃないな…。
   今は磨かれていないだけでへたを
   すればそこらの術者より強いかも
   しれんな。」

キョウヤ「なるほどね…。」

敬幸「おじさんがそこまで言うなら
   相当だな。」

寛幸「術者は自身の精神力で、強さが決ま
   っている。
   だが、あの子は生まれ持っての
   能力が強いのだ。
   本当はもっと鍛えさせたい所だが
   それでも強さは上がっている。」

敬幸「あの怪我は、弓を練習している
   のか?」

寛幸「あぁ。弓も扱いを慣れさせている
   ところだ。」

キョウヤ
  「桃子は中々言わないが、何故あんな
   修行を始めだしたんだ?」

寛幸「…仕方ない、この際はっきり
   言おう。どうやら鬼族の者達がどう
   やら良くないことを企んでいる
   らしい…。」

敬幸「まさか…!」

寛幸「あちこちで占拠していって
   次はここを乗っ取ってくるかも
   しれん。
   それに“あの方”とやらが鬼族と手を
   組んでいることが分かった。」

キョウヤ「あいつ…、それで。」

寛幸「恐らく鬼族は凄く強い。それを分か
   っているから修行をしたいと
   申し出てきたのだろう…。」

敬幸「明日からは警備を強化してくる。」

寛幸「ああ。よろしく頼む。
   それと九狐殿。お嬢さんの修行を
   今止めるのはやめなさい。
   あの子が大切ならあの子の気持ちも
   大切にすることだ。」

キョウヤ「……。」




「あ~ぁ。今日も疲れたから
 早く寝よう…。」

私は布団の中へ入る、すると勢いよく戸が
開いた

「ふぁ~あ?もう何、キョウちゃん。
 話なら明日にして。私眠い…。」

キョウヤ
  「お前の気持ちは分かった。
   俺としては今すぐ帰したいがな。」

「……、私は絶対帰らないから。」

キョウヤ
  「ひとまずは桃子のしたいように
   すればいい。但し、これだけは絶対
   守ってくれ。」

「何?」

キョウヤ
  「危なかったら俺を呼べ。
   お前は少し頼ることを覚えた方が
   良い。」

「うん、じゃあ絶対私を助けに来てね?」

キョウヤ「分かればいいんだ。」

私は何だか甘えたくなってキョウちゃんに
抱きつく

キョウヤ「おいおい。何だ、急に?」

「ごめんね、もうちょっとこうさせて。」

キョウちゃんもしばらくすると頭を
撫で始めた

(こうしてると…兄ちゃんの事
 思い出してくる気がする。)

私はゆっくり離れた

「じゃあまた明日ね。おやすみ。」

キョウヤ
  「おやすみ。ゆっくり休めよ?」

(明日も頑張るぞ!)

そして今夜の夢は懐かしい家族の夢をみた