私達は門から一回り大きな屋敷へと入った

そこには黒い羽がついている人やカラスが沢山いた

…「お、敬幸。どうした?
  久しぶりじゃないか。」

敬幸「あぁ、おじさん。」

…「それで、そちらの方達は?」

敬幸「俺を助けてくれた人と連れだ。」

キョウヤ「連れって適当すぎだろ!」

「あの初めてまして。橋ノ瀬桃子です。」

キョウヤ「桃子の保護者のキョウヤです。
     ほ・ご・しゃ・の!」

…「ふむ、初めてまして。私はカラス天狗
  現当主の寛幸といいます。わざわざ
  遠い所ご苦労だったね。今日はゆっく
  りしていきなさい。そうだ、今度集落
  の名物スポットがあるから…。」

敬幸「おじさん、話は後で。とりあえず
   空いてる部屋ないか?」

寛幸「すまん、すまん。あまりにも嬉しく
   てつい。では着いてきなさい。」

私達は広い部屋へと通された

私とキョウちゃんの2人だけになった

「寛幸さんっていう人、雰囲気がほのぼのしてるね。私もっと怖い人かと思った。」

キョウヤ
  「あいつのおじさんだろ?
   まーあんな小煩い奴がいたら性格も
   あんなふうになるわな。」

敬幸「聞こえてるんだよ、クソ狐!」

「トシ…その格好って?」

敬幸はいわゆる天狗が着ているような服に身をつつんでいる

敬幸「こっちの格好がやっぱり落ち着く
   から着替えてきたんだ。」

続いて寛幸さんも来ていた

寛幸「待たせたね。何用でここに
   来たのかな?
   そして敬幸、何があったんだ?」

敬幸「俺は集落へ帰ってくる途中何者かに
   襲われたんだ。
   反撃はしたんだが正体が
   分からなかった。」

「それ多分“あの方”の仕業だと思う。
 まだ確信は無いけど。」

敬幸「じゃあ出入りしてる奴らとなにか
   関係あるのか!?」

寛幸「“あの方”とは?」

「はい。実は…。」

私は今までの事を全て話した

寛幸「そうかそうか。
   つまり“あの方”の情報を集めるため
   にここまで来たのかな?」

「私は人間だからここへいてはいけない
 のは分かっています。でもどうしても
 知りたいんです!」

寛幸「そうだね。人間は妖怪と関わっては
   いけない。なぜなら危険だから。」

「迷惑かけるかもしれませんが…。」

寛幸「迷惑だなんておもってはいないよ。
   ただ、何故知りたいのか理由を
   聞かせてくれないかな?」

「……。」

(こうなったら言うしかないか…。)

「私は前までじいちゃんと2人で暮らして
 たんです。今は入院していて1人で暮らし
 てました。もっと昔は母と兄もいまし
 た。でも母は病気で亡くなり…、兄は
 突然何処かへ行ってしまって…。
 兄も私同様術者なので何かあって帰って
 こないんじゃないかって心配なんです」

寛幸「それは心配だね。」

「もしかしたら兄と“あの方”なにか関係
 あるかもしれなくて…。」

寛幸「昔と比べれば術が使える人間は
   少なく、稀なごちそうだ。
   だが、それはお嬢さんも同じだ。」

「それでも…兄を探したいんです!」

寛幸「なるほど。でもあまり無理を
   してはいけないよ?私達もある程度
   の協力はしよう。
   敬幸もこの子を守ってあげなさい」

敬幸「分かってる。一応恩人だしな。」

「ありがとう!寛幸さん、トシ!」

寛幸「はは。人間の子も可愛いもんだね。
   こんな人間が沢山だったら
   良いのに。」

敬幸「…。俺は集落の辺りを調べてくる
   からここで待ってろ。」

敬幸はわざとらしく戸を激しく閉めていく

寛幸「敬幸が珍しく照れているな。」

「え?照れてるんですか?」

寛幸「あぁ、敬幸は素直じゃないからな。
   まーそこが可愛いもんだがな。」

キョウヤ
   「ぶふっ!何々?ツンデレキャラ?
    可愛いですねー。」

(私からすればキョウちゃんも大分
 ツンデレだと思うけど…。)

キョウヤ
  「さてと…。俺も見回ってくるか。」

「あ、じゃあ私も…。」

キョウヤ
  「桃子はここで待ってろ。
   俺は様子見してくるだけだから
   な?」

「うん、分かった…。」

キョウちゃんは私の頭を撫で、出て行った

寛幸「ふむふむ。随分仲がよろしいな。」

「私には家族はいませんが、キョウちゃんがいるので寂しくありません。」

その時の寛幸さんは優しい眼差しだった

「そういえばトシにお兄さんもいたって
 話を聞いたんですが…。」

寛幸「その様子だと敬幸から話を聞いて
   いるんだね。敬幸の前に住んでいた
   集落はね…












   無くなってしまったんだ…。」