敬幸「っていうことがあってだな。」

キョウヤ「お前の話なげーよ。
     どんだけ話せば気が済むんだ
     よ。」

敬幸「お前らが話せっていうから話した
   んだろーが!」

「グゴーーーッ。」

横を見てみると桃子が居眠りをしていた

敬幸は桃子にデコピンをお見舞いする

「ふぁっ!!そうか、なるほどね。」

敬幸「テメェ…、いつから眠ってた?」

「失礼なっ!勇吾と琴葉さんと仲が良かっ
 ことは聞いてたし!」

敬幸「お前、それ最初しか聞いてねーじゃ
   ねーかよ!」

「まぁまぁ分からなかったらトシにまた
 教えて貰うからさ。」

敬幸はため息を付く

「あ、そうだ!トシに聞きたいことが
 あるんだけど…。
 “あの方”って聞いたことないかな?」

敬幸「はぁ?そんなの聞いたことねぇ。」

敬幸はまたふざけているのかと思っていたのか呆れていた

しかし私が真剣な眼差しで見ていたので
真面目に考える

敬幸「……。そういえば、今住んでる集落
   に出入りしてる連中が“あの方”と
   いう単語を口にしてたかもな。」

キョウヤ「!!」

「ホントに!」

敬幸「あぁ、なぜか不思議に思ってな。」

(今度こそ何か情報を掴めるかもしれない
 次は逃がさない!)

「じゃあ、お願い!トシの集落に
 連れてって!」

敬幸「あぁ…って、はぁ!?」

キョウヤ「ちょい、ちょい、桃子?
     何言ってんの?」

「自分でもとち狂ってることぐらい分かっ
 てるよ。本来は人と妖怪は関わっては
 いけない。でも…私は“あの方”をどうし
 ても知りたいの!」

あまりの必死さに敬幸は観念したようだ

敬幸「分かったよ。そんなに言うなら俺の
   集落へ連れて行ってやる。
   ただし、少しでも危なそうだったら
   強制的に戻すからな。」

「ありがと~っ!!じゃあいつ行くの?」

敬幸「じゃあ明日行くか…。今日はもう
   遅いし、朝早く行くぞ。」

「うん、色々準備してくる。」

私は嬉しかった
やっと“あの方”の情報が掴めてくる気がして光が差してきたようだ

部屋には敬幸とキョウヤの2人だけになる

敬幸「お前、よく反対しなかったな。
   あいつのこと大事じゃねーのかよ」

キョウヤ
「俺は桃子が危険なら勿論大反対だ。
 だが俺もそいつのこと知りたくてね。
 もしもの時は桃子だけ連れて帰ってくれ
 俺1人だけでも探し出すから。」

敬幸「すげー過保護っぷりだな。
   助けて貰って失礼だがあいつも所詮
   人間だ。
   いつ裏切るか分からねーぞ?」

キョウヤ
「前までの俺ならそんなこと言ってたな。
 桃子はそんな奴じゃない。
 お前もいずれ分かるさ。
 あ、でも鳥はバカ過ぎてわかんねーか。
 スマン、スマン(笑」

敬幸「テメェも一々ムカつく野郎だな。
   一言一言が多いんだよ。」

その頃桃子は…

「カラス天狗の集落ってどういう所なん
 だろ。ちょっとワクワクする。」

危機感が全然ない桃子であった




次の日…

「うぅ~っ。眠たい…。グーーッ。」

キョウヤ「おーい、桃子寝るな。
     自分で行きたがってたんだから
     起きなさい。」

「こんな早く行くと思わなかったんだもん
 少し寝かせてよー!」

敬幸「仕方ないだろ。連中くるのはいつか
   分からないし。それに朝の方が
   人が少ないから集落にたどり着き
   やすいんだ。」

「うへーっ。」

敬幸「それよりどうすんだ?
   俺以外は飛べないけど…。」

「あぁ、それなら平気!春夜!」

私は式神で春夜を呼び出した

春夜「ワン!!」

敬幸は目を見開いた

敬幸「デカっ!それに犬神か…?」

「まーそんな所。私が最初に契約した
 妖怪だからさ。」

敬幸「こんな子供に…。」
  (ここまでの術者だったとは。)

「あ、今バカにしただろ!
 じいちゃんの修行の賜物だし
 当たり前だけどね。」

敬幸「誰だ、そのじいちゃんって?」

「んーとね、私と最後まで一緒にいてくれ
 た唯一の家族なんだ。
 あまり言いたくないけど本当の家族は
 私が小さい頃にいなくなっちゃった
 からさ。」

敬幸「…、なんか悪かったな。
   嫌なこと聞いて。」

「いいよ気にしないで。
       それより早く行こ!」

キョウヤ
  「おい~っ!それよりこの犬どうか
   しろよ!俺にばっか噛み付いてくる
   ってどういうこと!?」

「春夜、大人しくして!そんなおじさんに
 噛み付いてたらアホになっちゃうよ。」

キョウヤ
  「だ~か~ら~、俺はまだ三十路前!
   アホはお前だよ。」

「あ~?何だって?」

敬幸(あいつ、家族いないのか…。)

わざと平気なフリをしているように敬幸には見えた
凄く寂しそうな顔を一瞬だけみせた気がしたからだ

敬幸「おい、茶番はいいから早く来い。
   ホントに連れてかねーぞ。」

「はいはーい。」


そして私達はカラス天狗の集落へ向かった


30分後………

「ねぇ…、まだ着かないの?」

敬幸「あぁ、まだ先だ。
   って何回聞いてんだよ!」

そう…私はかれこれ5回聞いているのだ

「ホントにあるわけー?
 全然影も形もみえないし…。」

敬幸「飽きるな、お前が行きたがってた
   んだよな?
   俺のせいじゃないよね?」

「ハイハイ、ソーデスネ。」

敬幸「いい加減にしろよ?」

(それより勇吾…、珍しくあの後全然
 来なかったな…。
 誤解なのに、悲しいじゃんか。)

私が考えていると…

敬幸「おい、着いたぞお嬢さん。
   ここが俺達の集落だ。」

「えっ?」

私は慌てて顔を上げるとそこには…

「はーー…。」

古い家屋や昔のような木の建物が沢山ある

「こ、ここが…。」

(いよいよ手がかりが掴める!)

私はドキドキしながら集落へ向かった