それからしばらく時が経ち…

今日、琴葉が祝言を挙げる日だ

わざわざあいつらが報告してきたのだ

俺は暇だったので集落の周りの見張りをしていた

(今日も平和か…。)
なんて自分らしくないことまで考える

しかし次の瞬間何か物音がした

(あそこからだ!)

俺はすぐ駆けつけると…何と鬼族が1人門付近でこっそり開けようとしていたのだ

鬼「へへっ…烏の奴らチョロいな。
  さて、すぐ準備だ、
  …!ぐっ、がぁーーー!!」

敬幸「おい…、野蛮人が何してるんだ?
   その汚い手を下ろせ。」

鬼「お、お前どうして気づいて…」

敬幸「死ぬ前に1つ聞く…。
   テメェは今何をしようとした?」

鬼の胸ぐらを摑みキツく問い詰めた

しかし、次の瞬間空に火花が灯った

敬幸「!ちくしょう、まさか仲間を
   呼んで!?」

鬼「残念ながらお前達の村は今日で
  終わりだ。」と高笑いしながら言った

敬幸「そうかい。じゃあテメェも今日で
   終わりだ。」

鬼に呪符を貼り付け燃やした

鬼「ぐわぁぁぁーーー!!」

冷たい眼差しで睨みつけ、村の中へ戻った

(とりあえず早く村に知らせないと!)

そこへ丁度兼元が来た

兼元「そんなに慌ててどうした?」

敬幸「兼元、大変だ!
   鬼族の奴らがとうとう戦を仕掛けて
   来た!
   皆に伝えてくれ!」

兼元「なっ!分かった、皆に知らせる!」

兼元は村の中に行き大声で叫んでいる

途端に村中は騒がしくなっていった

俺は長である兄貴の所へ向かった

敬幸「兄貴っ!鬼族の奴らがとうとう…
   早く皆を避難させないと。」

幸成「そうか……随分と見くびられたな。
   俺が余程弱くみられてたんだな。」

…「幸成!ここは一旦逃げましょう!」

幸成「母さん!止めてくれ!
   俺は戦うよ、一族として。」

兄貴と母が言い合っている

母「っ…!お前のせいよ!
  だから養子に入れなければ、こんな
  事にならなかったのに!」

敬幸「…………。」

幸成「母さんは先に逃げてくれ。
   敬、早く行こう。」

わめき散らす母を尻目に兄貴と集落の外へ
向かう

分かっていた、自分が厄介者だと
いうことは…

そもそも血が繋がってないのだから仕方ないのだ…

幸成「余計なことは考えるな…、敬。
   今の状況だけを考えろ。」

敬幸「あぁ、分かってる兄貴。」

向かってみると予想通り激しい戦が始まっていた

俺と兄貴は鬼達を抜いた刀で切り捨てつつ
一番激しくなっている場所に向かった

敬幸「暁継はどこだ!」

鬼「ひ、ひぃ!知らないぞ、俺は。」

感覚を研ぎ澄ませ、集中させる

敬幸「…!兄貴、後ろだ!」

幸成は寸前の所で刀を弾き返した

暁継「まぁ、いくら若僧とはいえ
   一筋縄ではいかないな。」

敬幸「おぃおぃテメェ、やっと尻尾を出し
   たな?」

暁継「儂はある奴に助言して貰って戦を
   仕掛けたのだ。
   大人しくしないなら命は無い。」

幸成「暁継殿、残念です…。
   いつかは上手くやっていけると思っ
   てましたが。」

敬幸「責任転嫁するような奴と上手くやっ
   ていけねーよ。
   さっさと追い出すぞ、兄貴!」

暁継「ここで儂らと遊んでいるのはいいが
   息子が雪女の所へ迎えに行って
   なぁ。」

敬幸「…、それがどうした?」

暁継「数日前に婚約するにあたってある
   条件を受けてくれと言ったら突然
   拒否してきてな。
   息子はどうしてもというから少々
   強引に婚約を結ばさせて貰う
   ことにした。」

敬幸「お前、アイツらに…琴葉に何を
   したーーっ!!」

暁継はニヤニヤ笑っていた

(今すぐにでも駆けつけたいがここを守ら
 ないと。どうすれば…。)

幸成「敬…行きなさい。
   その娘の事が気になって集中出来な
   いだろ?
   ここは俺に任せてくれないか?」

兼元「そうだ、敬幸早く行け!」

敬幸「兄貴、兼元…。
   すまねぇ、無事でいろよ!」

俺は2人に任せて琴葉達の元へと向かった

(早く、早く、早く!!)

夜のはずなのに火のせいで辺りが赤に
染まっていた

しばらく飛んでいると琴葉のいる家が
見えてきた

(戸が開いている!?まさか!)

敬幸「琴葉、勇吾!無事か…っ。」

琴葉「と、敬幸さん…?」

目に入ってきたのは奥で倒れている2人と
体中に痣が出来た勇吾を抱え込む琴葉

そして…

赤松「ふん、素直に言うことを聞かない
   からこんなことになったんだぞ。
   いいから来い、琴葉。」

暁継の息子・赤松が血で濡れた刀を握っていた