勇吾「姉上…、本当ですか…?」

琴葉「えぇ、そうよ。
   私お嫁に行くことになったの。
   だからしばらく勇吾と会えない
   わね。」

琴葉はいつもの優しい笑顔で笑っていた

勇吾「嫌です、姉上が…。
   そんな突然言われても。
   僕姉上と離れるのは嫌です!」

琴葉「ワガママ言わないの。
   でも落ち着いたら再会出来るかも
   しれないからね。」

勇吾「姉上はその人のこと好き
   なんですか?」

琴葉「え……。」

勇吾「父上と母上からは姉上が突然結婚
   したいって言ってました。
   理由を聞いてもただ結婚したいと
   だけしか言わないと…。
   本当は何か理由があるのでは?」

琴葉「ごめんね、勇吾…。」

琴葉は涙を流し、勇吾の頭を撫でた

(僕には何も話してくれない…。
 悔しいけど、あいつだったら姉上は
 話すのかな?)

勇吾は外へと向かい家から飛び出した

琴葉「勇吾、何処へ行くの!?」

(あいつだったら、何処にいるんだ。)

しばらく森の中を走っていたら見覚えの
ある翼が目にとまった

勇吾「おい、敬幸!用があるんだ!」

敬幸「俺は用が無い。早く帰れガキ。」

勇吾「姉上が今度結婚するんだ!
   何とか説得しろよ!」

敬幸は一瞬目を見開いたがまた頭を下げた

敬幸「知らねぇ…、勝手にしろ…。」

勇吾「俺は良くねぇんだよ!」

敬幸「ねぇちゃんが結婚したいって
   言ってるなら良いんじゃないか?
   俺には関係のないことだ。」

勇吾「………。」

勇吾は泣きじゃくり、また走り出した

そしてしばらくすると琴葉がかけてきた

琴葉「あ、敬幸さん!勇吾を見かけなかっ
   たかしら。
   突然飛び出してしまって探し回って
   いるのだけど…。」

敬幸「知らねぇ。何かわめき散らしていっ
   て何処かに行ったがな?」

琴葉は不安そうに辺りを見回す

敬幸「あんた、結婚するんだってな。」

琴葉「!…まぁ知ってるわよね…。
   そうなの、向こうから結婚しようっ
   て言ってくれたから。」

敬幸「まぁ、良いんじゃねぇーか?
   噂だと鬼族は力が強いのが売りだか
   らな。
   結婚相手にはもってこいだ。」

琴葉「…………。」

敬幸「だが、あの勇吾の様子は相当だぞ?
   嫌いな俺に話をふってきた
   ぐらいだからな。」

琴葉「勇吾はきっと少し混乱してた
   だけで…。私も甘やかしすぎたかし
   ら。
   敬幸さんも祝福してくれるわよね?
   しばらく会えないけど、また
   戻ってこれるかもしれないから。」

琴葉はニコニコと笑っていた
しかしその顔は何処か悲しみの色を
していた

そして琴葉は勇吾の走っていった方向に
駆け出していた

(ちっ。何だよ、あの顔は…。)





琴葉「勇吾っ!何処にいるの?
   早く出てきて?」

(つらい…。苦しい…。)

琴葉「家に戻りましょう?」

(本当は嫌だ。)

琴葉は躓きその場に伏せる

琴葉「……、敬幸さん…助けて。」