甘桃と幻妖怪





床の上に成人の男が寝ていたのだ

「誰この人?」

キョウヤ「不審者か?どうやって入って
     きたんだ。とりあえず警察に
     連絡した方がいいのか?」

「警察は待ってよ。様子見た方がいいんじ
 ゃないの?」

キョウヤ「ばっ!お前、そんなことしてて
     取り返しのつかないことしたら
     どうすんだよ!」

「確かに、怖いけどさ…。」

(それにあのカラスがいないのはどうして
 なの?あのカラスの主とか?そしたら謝
 らないと。)

もめ合っていると男がゆっくりと起きた

しばらく辺りを見回し、こちらに気づくと
じっと見つめてきた

(怖い、怖い!めちゃくちゃ睨まれてる。
 やっぱりあのカラスの飼い主で
 怒ってるんだ!)

「あのっ、勝手にすいません!
 カラスを連れてきちゃって。
 あなたが飼い主ならちゃんとお返しし
 ますので!」

謝ったが、相変わらず睨んでくる

(なにかヤクザとか?
 慰謝料とかで借金取り立てとかしてきた
 らどうしよ…。)

…「は?何言ってるんだ?
  てかここは何処だ?俺は確か、必死に
  逃げてきてそれで…。」

どうやらカラスの飼い主ではないようだ

ならあのカラスは何処へ行ったのだろうか

キョウヤ「うちの子何か勘違いしたらしく
     て、今のは聞かなかったことに
     して下さいね。
     それとお前こそどうやって入っ
     来たんだ?
     玄関の鍵は掛けてあったし…
     今すぐ出てかねーと警察呼ぶ
     ぞ?」 

…「あ?おい、待てよ!俺は他人の家に
  入っていった記憶はねーぞ!
  気づいたらここにいたんだよ!」

キョウヤ「はいはい、加害者はそう言うん
     だよ。
     さては桃子のストーカーか何か
     か?変態だな、家にまで
     入ってくるとは…。
     立派な犯罪だよ?これ。
     詳しくは警察に…。」

…「ストーカーじゃねぇし!
  濡れ衣もいいところだ!
  つーか、初対面にいきなり変態は
  ねぇぞ!」

(あれ?パニックで気がつかなかった
 けど…。)

「とりあえず落ち着いて!
 それより、あなた妖怪でしょ?」

男は驚いた目でこちらを見ていた

…「……何で分かった?
  お前、ただの人間じゃないな?」

「うん、まぁそうだね。
 霊感も人よりある方だし、一応
 この2人と契約交わしてるからね…。」

あはは…、と苦笑いをする

…「俺もなんかすまなかった…。
  お前が言ってたカラスは俺のこと
  なんだ。」

「カラスの妖怪?」

…「カラス天狗だよ。お前ホントに
  術者なのか?」

不審な目で見てきた

「勉強不足で…。妖怪がこんな身近にいる
 事知ってまだ半年ぐらいだからさ。
 私は桃子って言うんだけど、妖怪なら
 安心だから怪我も深いようだし
 少しの間ここに居てもいいよ?」

…「ありがたいが、少しは警戒した方が
  いいんじゃないのか?」

「キョウちゃんもいるし平気だよ。
 それに最初にあなたの面倒看るって
 言っちゃったし…。」

キョウヤ「やっぱ、その約束なし。」

「えー!勝手にしろって言ったの
 キョウちゃんでしょ!」

キョウヤ「お前なぁ…、よく考えてみろ
     よ。こんなおっさん看病してて
     何の得があるんだよ。
     それに男だし、追い出した方が
     いいと思うぞ?」

…「話してるとこ悪いが俺はまだ、
  20代だからな?」

「じゃあキョウちゃんもおっさん
 じゃん。それに男だし。」

キョウヤ「それはそうだが…。」

「じゃあ問題ないよね?
 あっそうだ!名前何て言うの?」

…「と、敬幸《としゆき》だ。
  じゃあ世話になる…。すぐ直して
  出て行く。」

「敬幸かー…。長いからトシでいいよ
 ね?」

敬幸「一応年上だからさんとか付けろ
   よ…。」

「良いじゃん!その方が親しみやすいし、
 呼びやすいからさ。」

キョウヤ「あれ?何この疎外感…。
     無視しないで?
     桃子サン?俺のハートメンタル
     弱いんだから…。」

勇吾「…………。」

「あ、まだ居たんだ。って、勇吾
 どうしたの?怖い顔して…。」

敬幸「お前っ…!生きてたのか。」

勇吾「……お蔭様でな。」

敬幸「…。琴葉は…。」

勇吾「誰がお前に教えるか。」

勇吾は顔を歪ましながら背を向けて
部屋を出て行った

玄関のドアを思い切り閉める音がする