(どうしようか、あいつ全然動かなく
 なったよ。)

多分気絶してしまったのだろう

「ったく!こんな時に眠りつき
 やがってさ。
 後で起きたら苛めてやるんだから!」

何とか術や御札を駆使しながら攻撃を
防いでいるが
これでは私の方が先に倒れてしまう

(もっと修行してれば良かった。)

いつ体力が切れるか怖くて
汗が流れっぱなしである

雲蓮「お嬢さんは術者としてはまだまだ
   ね。
   1番は“あの方”で次に強かったのは
   まぁ…あの人だけど、すぐ
   やられちゃったものね…。」

「さっきから何訳の分からない事言ってる
 んだよ。結局何が言いたいわけ?」

雲蓮「つまり、何かを守ろうと使う力は
   呆気なく果てちゃうものなのよ?
   だから諦めなさい?お嬢さん。」

「そんなの、やってみるまで分からない
 から私は絶対に諦めないけどね?」

雲蓮(うふふっ!あの人と同じこと言ってるわ~。この子もまた、残酷な現実を
見て絶望するといいわ。)

桃子は御札を出し、唱えて煙幕を出した

雲蓮(目眩まししたつもりだろうけど
   私は気配で分かるから意味は
   ないのだけどね。)

すぐさま気配を察知すると桃子のいる方へ
と糸を飛ばした

雲蓮「可愛いお嬢さん。これで諦めて
   くれたかしら?
   さぁさぁ、全ての希望を失い
   絶望に満ちたその美しい顔を見せて
   おくんなし!」

雲蓮は高笑いをし、煙幕が収まるのを
待った

煙が退くと確かに桃子は糸で
グルグル巻きにされていた

雲蓮「なっ!!に、せものっ!?」

捕まえていたのは桃子の体型に似た
人形だったのだ

雲蓮「あの子は何処っ!!
   いつの間に…。」

辺りを見回すが何処にもいなかった

「残念だったね、雲蓮!
 小娘といえどやるときゃ、やるのよ!」

私はオトリを使って雲蓮がそっちに気を
取られてる間に雲蓮の後ろ側へと
回り込んでいた

「ほっ!やっ!」

木を登り高くジャンプをして、雲蓮の背中
目掛けて数珠を貼り付けた

雲蓮「ぎゃあーー!!なっ、何をして
   くれたのっ…。」

雲蓮は苦しそうに藻搔いていた

「え?ただ数珠を貼り付けただけ
 だけど?」

雲蓮「あんたは、一体何者なのっ…。
   こんな術使えるなんて聞いて
   ないわ!」

御札を取り出し、縛られている勇吾に
向かって投げた

繭は解かれ、勇吾は激しく咳き込んでいた

「ほら、早く立ち上がりな?
 そうしないとまた繭にされるよ?」

ニヤニヤしながらそう言うと

勇吾「うるっせぇ!お前こそ、捕まったら
   どうなるか分かってたのか?
   早く逃げればお前だけでも助かった
   のによ…。」

「私は絶対に捕まらないし、皆を無事に
 連れて帰る!」

勇吾「はぁっ…、ホント馬鹿だな…。」

「あんたに言われたくないわ、
 このドS小悪魔め!」

勇吾「じゃあ取りあえず喧嘩はお預けだ。
   あいつをちゃちゃっと倒してから
   だな。」

「う、うん…。」
(こいつ、話逸らしたな…。)

雲蓮「良くもやっ、てくれたじゃない
   小娘ふぜいがっ…。
   少し痛い目を見た方がいいわね。」

雲蓮は糸を操りだすと、奥の方からガザガザと音がした

なんと、居なくなっていた杏奈と真守が
出てきた

(もしかして、操つられているの?)

雲蓮「お相手はこの子達がするわ。
   さぁ、手を出さずにいられるかし
   らね?」

2人はいつの間にかナイフを取り出し、
襲いかかってきた

「なんて卑怯なことを…。」

勇吾「手っ取り早いとこ、あいつらを
   動けなくなる程攻撃すればいいんだ
   がな。」

「それは絶対ダメ!2人共怪我させないで
 止めてあげないと!」

勇吾「お前は甘すぎなんだよ。
   大体、杏奈って奴お前に意地悪ばっ
   かしてて、お前嫌いなんだろ?
   助けなくても寧ろざまぁねぇんじゃ
   ねーのか?」

「確かに、杏奈は嫌いだよ…。
 でもそれとこれとは別!杏奈がいなくな
 って悲しむ人は居るんだから、その人達
 のことを悲しませたくない!」

勇吾(こいつの発言、自覚あるのか
   無いのか…。
   自分を犠牲にしてもいいのかよ。)

勇吾「はっ、正義ぶってんじゃねーぞ。
   発言が寒いんだよ。」

「あんた、ホント顔に似合わず口が悪い
 ね!いいから2人をどうするか
 考えてよ!」

(ホントにどうしよう…。
 行動が俊敏すぎて避けるだけで精一杯
 だよ。)

「とにかく森の中を走って隠れよ。
 茂みとかで欺けば何とかなるかも!」

私達は全速力で走っていった

雲蓮「あら~、また逃げるのね?
   鬼ごっこはいい加減飽きちゃった
   から本気で捕まえるわよ?
   貴方達、探しなさい。」

そう言うと杏奈と真守は追いかけてきた

10分もしない内に撒くことに成功した

勇吾「で、これからどうすんだよ。
   このままずっと隠れてる訳にも
   いかねーし。」

「分かってるよ。2人を助け出さないと
 っ…。って、あっ!」 

勇吾「何だよ?」

(簡単な考え、あったじゃん。
 でも出来ればしたくなかった。)

「仕方ないけどこれしかないから
 言うね…。」