既に夜になっていたので森の中は暗くなっていた

(何処にいるの?早く、早く!)

キョウヤ「あっちから気配がする。
     しっかり掴まってろ!」

キョウちゃんは刀を取り出し目の前に斬りつけた

振りかざした刀は弾かれていた

キョウちゃんは後ろに着地した

私はゆっくりと地面に降ろされた

暗やみの中から私を突き落としたキョウちゃんに似た人が現れた

キョウヤ「うぇっ…。自分に似てる奴とか
     気持ち悪いな。」

サトリ「気持ち悪いとは失礼ですね。
    私の完璧な術ですよ?」

「サトリ!今度こそ許さない!」

サトリ「まだ生きていたとは
    図太いですね…。」

キョウヤ「俺のことを殺ろうとしたのは
     お前達がいうあの方か?」

サトリ「さぁ?そこまでは知りませんが。
    あなたが使えなかったからじゃ
    ないでしょうか?」

キョウちゃんは声にこそ出さなかったが
赤い目にもの凄い怒気を孕んでいた

サトリ「所詮、獣妖怪が私に勝てるはずか
    ありません。
    さぁ、やっておしまい。」

サトリがそう指示すると動き出し、
キョウちゃんに襲いかかった

偽物も刀を取り出し斬りつけてきた

(サトリは相手の能力を真似するのか…)

凄まじい戦闘になった、が

偽物は本物に勝てるはずがなかった

キョウヤ「もう終わりか?もう少し
     楽しめるとおもったがな?」

キョウちゃんは偽物を地面に叩きつけ
横に刀を突き刺していた

サトリ「くっ…。お前達もやるんだ!」

サトリが指示すると黒い奴らが一斉に
キョウちゃんの周りに貼り付いた

「止めろ!卑怯な真似をするな!」

サトリ「ふふ。私に歯向かうからいけない
    のですよ。」

私は急いで数珠を取り出した次の瞬間

キョウちゃんを取り囲んでいた黒い奴らが
赤い炎によって焼かれた

偽物も炎で焼かれてしまった

赤い狐火は燃え盛りながらキョウちゃんの
周りを包んでいた

サトリ「っく…、私に勝てるとでも
    思ったか?
    私の方が知能も高く
    高貴なのだぞ!」

キョウヤ「そうかい?俺達妖怪にはそんな
     もの必要ないと思うけどな?
     弱い奴は強い奴にのみ込まれる
     んだよ。
     所詮妖怪は力で決めつけられる
     のが知らねーのか?」

キョウちゃんは冷たい笑顔でサトリに
笑いかける

サトリ「私は、弱くない…。
    私は高貴な妖怪ぞ…。」

サトリは何かブツブツと独り言を喋り出した

サトリ「ぎっ…、ギャアアア!!」

サトリは苦しみながら黒いものに包まれ
消え去っていった

(どういうこと?…まさか!)

私はキョウちゃんを助けた日の朝のことを
思い出した

(てことは。霊達が暴走しているのも
 “あの方”が関係してるってこと?)

私は益々不安が溜まっていった

キョウヤ「まだ何が起きてるか把握は
     出来ないが、あまり考え
     込むなよ?」

キョウちゃんは私の頭を撫でた

「うん。でもごめんね、キョウちゃん。
 手掛かり摑めなくて。」

キョウヤ「気にすることはねーよ。
     だからしばらく一緒に住まわせ
     てもらうぞ。
     帰ろ、桃子。」

(え?今、私の名前を…。)

私は嬉しくなり、キョウちゃんの背中に
飛びついた

キョウヤ「なっ、重てーよ!離れろ!」

「やだもんねー!」