ていうか、残された。

「あの、今日は本当に、突然押しかけてすみません」
「正武さんは、楽しかったですか?」
「え、はい」

なら良かったです、と返事。この人は現世でどれだけ徳を積むつもりなのだろう、と考える。
いや、前世でもっと積んできたのだろう。

「ありがとうございました」
「こちらこそ、気をつけて」
「八橋さんも」

花火が終わって駅が混雑してきた。その前に乗った麦前の判断は正しかった。
私はパスケースを出して、歩き出そうとした。

「……嫌なら、ちゃんと言った方が良いと思います」

振り向くと、八橋さんはまだすぐそこにいた。