まさか離されるとは思わず、無意識にその手を追いかけてしまう。
それに気づかれて、苦笑された。

「ずっと繋いでると、連れて行きたくなるので」

困ったように言うので、私は一人赤くなる。
王子と言われていた由来、本当はこういう箇所からな気がする。

「八橋さんは天然タラシだ……」
「え、そうですか?」
「そういうところも、好きなんですけど……」
「じゃあ変わらないでいます」

爽やかに言われた。私はどんどん赤くなるばかりだ。

ホームに電車が入った。列の一番最後に並んで、八橋さんは歩いていく。