後部座席にお弁当とバッグを置く。

「同じ種類と同じ条件でも発芽しないのってありますし。そんなこともありますよ」
「そうなんですね。まあ、子供ながら、結構ショックを受けて」

運転席を開けて乗り込む。助手席に八橋さんが乗った。

「植物には関わらない方が良いなと思ってはいるんです」
「水やりを、断ったのは」

余りにも切ない横顔だったので、言い訳をするように口を開く。
それが意外だったのか、八橋さんがこちらを向いた。

「いつか、水やりを断ったのは、私の手がこう土塗れで汚くて、触るの嫌だろうなと思ったからで」