八橋さんが顔を上げる。

「炊事洗濯掃除、できることは全部やります」
「いや、あの」
「正武さんの恋人には俺から説明します。今からでも呼んでください」
「え、えっと」

そんな人いないから呼べません、とも言えない。

「……八橋さん、手ぶらだったのって」
「仕事終わって、荷物置いてそのまま来ました」
「こんな遠くまで……」
「正武さんに会ったら、元気が出ると思ったので」

元気が、なかったのか。

「……婚約者の方は……」
「はい?」
「だから、婚約者にはうちに来てること、言ってるんですか?」