精鋭が揃っているとはいえ、八橋さんが抜けた穴は大きいだろう。

「……有休消化中なんです」
「そうですか」
「有休が終わったら、退職します」
「え?」

視線を落とす八橋さんの目には色が無かった。

「なんで……」
「あの部屋も出ることになりました。もう何も残ってません」

ふと頭に浮かんだのは、婚約者の企業にでも移るのかもしれない、ということ。
でも、あのファミリー層向けのレジデンスから出るのは勿体ない。あそこなら四人くらい平気で住めそうなのに。

「二週間、ここに置いてもらえませんか?」
「に」

二週間?