強引な無気力男子と女王子

 「何話してるの」
 「うわっ、悠理、いつのまに!?」
 「今」
 「全然気づかなかった」
 「そのままキスすれば良かった」
 「正面から来られたらさすがにわかるって」
 「キスするのはいいんだ、ふ〜ん」
 「なっ・・・、そういう意味じゃない!」
 いつの間にか後ろに回り込んでいた悠理に、二人してびっくりする。
 傍から見れば、この会話はバカップルだろう。
 現に、千晴くんは「あま・・・」とでもいうような表情をしてる。
 ごめん、千晴くん!
 でもわかって、これは不可抗力なの!
 「悠理、あっち行こ!」
 私は、悠理の手を引っ張って、千晴くんから離れた。

 ここまで来れば、いいかな・・・。
 人の気配のないところまで走ってきた。
 握った悠理の手は海水で濡れている。
 ・・・ん?握った・・・?
 「あ!」
 無意識のうちに悠理の手を握ってたことに気づいて、急いで手を離す。
 ドクドク、心臓が騒ぐ。
 「真紘、ビキニ着てくれたんだ」
 ビクゥ!
 突如、悠理がビキニのことに触れて肩が跳ねる。
 かんっぜんに忘れてた!
 「し、仕方ないじゃん!服返してもらわないといけないんだから!」
 「ラッシュガードも着たんだ」
 「え?そうだけど」
 悠理の真意がいまいちわからなくて首をかしげる。
 「どうして真紘のカバンにラッシュガードまで入れたんだと思う?」
 「・・・日焼けしないため?」
 「不正解」
 私が知るか、そんなこと!
 それに、ラッシュガードは本来、日焼けを防ぐものでしょ?
 不正解じゃないじゃん。
 「理由は二つあって」
 「?」
 悠理がピン、と二本の指を立てる。
 いつもと変わらない眠そうな目からは何を考えてるのか掴めない。
 「一つ目は、真紘の水着姿を見られたくなかったから」
 「はぁ・・・」
 それはいいよ、私だって見られるの恥ずかしいし。
 「二つ目は・・・」
 言いながら、悠理はラッシュガードのファスナーに手をかける?
 少しだけ下に下りたファスナーは、ジジ・・・と音を立てる。
 「悠理?」
 「俺がこれを脱がせたかったから」
 「はぁ!?」
 悠理はそのまま、一番下までファスナーを下ろした。
 肌が、日の光にさらされる。
 悠理の言ってることを理解した私は、一気に顔が赤くなる。
 「バカッ、変態!」
 「うん」
 何がうん、だっ!
 この変態!
 そのまま悠理は私の唇に自分のそれを押しあてる。