瀬戸悠理ってもしかして結構いい奴だったりする?
 「そーいえばさ」
 「何?」
 本当に何だろう?
 できれば早く戻ってお弁当食べたいんだけど。
 私のそんな思いが伝わったのかなんなのか。
 間髪開けずに次の言葉が飛んできて、私はフリーズした。
 「いつもの王子様キャラはどうしたの」
 あ。
 忘れてた。
 「‥‥‥‥‥‥」
 「‥‥‥‥‥‥?」
 しばらくの沈黙。
 「どうしたの?」
 「‥‥‥‥‥‥」
 再びしばらくの沈黙。
 「あ、もしかしてさっきのが素?」
 「っ‥‥‥!!」
 ヤバい、露骨に反応してしまった。
 「へぇ、図星」
 そして、無表情だった瀬戸悠理の顔に初めて微かに不敵な笑みが浮かんだ。
 「さっきの乱暴な開け方とか、口調とかが素なんだ〜」
 「いや、違っ‥‥‥!」
 「何が違うの」
 「それは‥‥‥!!」
 何も違わない。
 だってこれが素なんだから。
 いや焦るな、私よ。
 焦ったら負けだ。
 「誰でもイラついてるときはあるでしょう?」
 「つまり、今はたまたまイラついてただけだと」
 「そうそう」
 よし!上手く誤魔化せた!
 一方の瀬戸悠理は納得してないみたいで、首を捻っている。
 「じゃ、じゃあそういうことだから!バイバイ!」
 「お、おい‥‥‥!」
 これ以上一緒にいたら確実にボロがでる!
 そう確信した私は無理矢理会話を中断し、資料室を飛び出した。
 どーかバレてませんように!