ーーー"彼女"が出来て6日目。
"彼女"と映画を見に行った。
たいして興味もない恋愛映画だった。
女の子と付き合うのって、想像以上に面倒だ。
映画を見るときに、ポップコーンとジュースを買ったけれど、“彼女”は財布を出すそぶりも見せなかった。
中学生の僕がそんなにお金を持っているわけがないだろ、と思ったけれど、“彼女”に文句を言うのさえも面倒だったから、黙って2人分の飲み物と大きなポップコーンを買うことにした。
"彼女"を家まで送る帰り道。
たまたまゆんと菊花ちゃんと遭遇した。
「彼女できたの?やったじゃん」と菊花ちゃんに祝われた。
あんまり嬉しいとは思わなくて、今日もゆんは可愛いなぁと、そんなことを思っていた。
そういえば、母さんが職場から貰ってきた果物が大量に家にあるから、ゆんや双子たちに届けてって言われてたんだ。
その旨を伝え、『あとで行くね』と言った僕を、"彼女"は何故か複雑な顔をしながら見つめていた。
「あ、あの子と知り合い?」
「幼馴染」
「…あの子って、ひまわりクラスの子じゃなかったっけ…」
「そうだけど、それがどうかした?」
「……、そ、そうだよね。ううん、なんでもないよ…」
“彼女”を家まで送り届ける途中、そんな会話をした。
“彼女”が複雑そうな顔をしていた理由を、僕は知ろうとも分かろうともしなかった。



