『えっ。本当に?』
『あー、うん。ていうか俺もう帰らないと』
『あっ、ごめん引き止めて』
『いや。もういい?帰っても』
『…じゃ、じゃあ、今日から私は"彼女"で、渡来くんは"彼氏"ってことで…あの、よろしくお願いします』
『…ああ、うん。じゃあ』
『うんっ、またね!』
僕のことが好きだから付き合って欲しいとい言う彼女の告白を、ただただ早く帰ってゆんに会いたいという理由で承諾した僕。
嬉しそうに、――そしてどこか勝ち誇ったような笑みを浮かべる彼女に軽く手を振り、僕はゆんのもとへ向かう足を早めた。
ゆんの家に着きインターフォンを押せば、彼女はまたいつもの如く慌ただしくドアを開ける。
『ましゃ!おかえり!』
そして勢いよく抱きついてくる彼女を、僕はぎゅうっと抱きしめるんだ。
人は間違うものだって、いつかの父さんが言っていた。
失敗しても、それは80年の人生のほんの一部に過ぎないって、そう教えてもらったんだ。
だからこの日の僕の選択は、その“失敗”の一部だと思うことにした。



