「ハナ、いってやりなよ」
「え?な、なにが……」
「春のあの時みたいに、
『ヘンタイ野郎ぉぉぉぉぉ!』
って」
きょとん、とこちらを見つめるハナ。
あれ、こんな感じかと思ったけど、違ったかな。
聞いた話から想像して全力で演技してみたんだけど。
「ぷぷっ……ちょっと違うけど、似てるっ」
「でもそれを言う権利は、あるでしょ?」
「ま、まあ、事実だもんね。それにもう、私の中で理想のしょーくんは崩れたし…」
「自分の気持ちを言葉にするだけよ。それに権利も資格もいらないわ」
必要なのは、言う気だよ。
くすっと笑って、こくっと力強くうなずいたハナは、全速力で駆けていった。
「あ、やば」
3時間目は体育だから急がなきゃ、と思って私も教室へ猛ダッシュした。
体育の授業はA組と合同だけど、もちろんそこにはしょーくんの姿はなかった。
ハナの勇気が届きますように、と願った。



