あー、あの一件か。
ハナと喧嘩したあの日の、できごと。
「へえ、あの子だったの……」
「この前すれ違ったとき、おんなじ声だったの。すごくお胸が大きくて印象に残ってるんだよね……」
「どこ見てるのよ」
「だって谷間がっ」
きゃー、と目を塞ぐハナ。
そんなことより。
「いいの?追いかけなくて」
はっ、と動きが止まって、みるみる顔を歪める。
ぐっ、と握りこぶしを胸に当てて、ぶんぶん首を横に振る。
「……っわ、私には、そんな権利ないし……」
「は?」
「だって、私はしょーくんの彼女でも、婚約者でも、奥さんでも、何でもないよ!」
「……それはそうだけど、」
「しょーくんは、何でもないやつが自分の女関係をあれこれ言う資格ないって、思ってるみたいだしっ…」
「……」
「しかも、しょーくんにとっての“特別”と、私のこころの中にある“特別”は、まったく違うカタチなんだもん……」
ああ、もう。彼は、ほんっとうに。
「バカ……」
え、私? と困り眉がこちらを向く。



