少しの沈黙の後、彼女が話し始めた。

「アタシ、前の学校に付き合ってた人がいて…。」

ああ、そうなんだ。

「三年生で、サッカー部のキャプテンで。」

なるほどね。

「転校が決まった時、フラれちゃって…。」

彼女の目は遠くを見つめている。

きっと、そいつを思い出しているのだろうか。

「そうだったんだ。」

俺は、何て言ったらいいのだろう。

「未練がましいですよね、いつまでも…。」

彼女は気丈に、そしてこらえている。

泣くのを。

「…そいつの事まだ、好きなんだ。」

「………。」

「分かってるんです。もう、どうにもならない、って。でも…。」

もうほとんど涙声だ。

「…時間が解決してくれるんじゃない。」

俺の口からでた言葉は冷たい一言だった。

でも、正論だと思った。

「でも、このままだったらきっとかなり時間がかかるかもね。中途半端にサッカーに関わったら。」

俺は続ける。


「いっそ、とことんマネージャー続けて、克服したら。思い出して思い出して、もう過去の事なんだって思うしかないんじゃない。」

思わず口調が強くなってしまった。

「…って、正式にマネージャーになって欲しいんだけどね。」

「えっ。」


話しの展開からいって…旬磨のヤツ、告ったな。

そこらの女子とは違う。

すぐに女は涙を見せて、すがってくる。

何度も言い寄ってくるから、一回遊びに行けば、次の日から彼女気取りだ。

そして、その気がないと分ったら泣いて見せる。

この子は違う??

遠くにいる、そいつを想っているからだろうか??