「潤くん、あの…。」

見つめた万桜の表情はこわばっているようにも見えた。

お互いの事をイヤと言う程解り合っている俺達。

「うん??」

慌てて目を逸らしたが、何を言い出すかは予想がついている。

ゆっくりと口を開いた。

「…アタシはもう……。」

うん。

気付いてたよ。

「…その…。」

俺の事、傷つけないように言葉を選んでいる。

「もういいよ。解ってるよ。万桜の事なら何だって。」

その一言に万桜は驚いたように。

「潤…くん。」

俺の方が悲しいのに、もっと悲しい顔をする。

「ごめんなさい…。」

「謝らなくてもいいから。」

目一杯、強がってみせた。

「…好きなヤツ、いるんだ。」

「………。」

何も答えなかった。

多分それが、答えなのだろう。

「また電話していいかな??」

「…もちろん。」

「メールも??」

「うん!!」

やっと笑顔が見れた。

「合格してこっちに来るから、色々案内してくれる??」

「アタシで良かったら!!」

「その時まだ―――。」

万桜の事諦められていなかったら、もう一度考えてくれるかな??とは口に出せなかった。

後悔していたから。

俺があの時、別れを決めなかったら…なんて。

そしたら、まだ俺達、一緒に笑って泣く事が出来たんじゃないかって。