そんな事ないよ、と口にはしなかった。

潤くんが、とても小さく見えたから。

ううん、アタシの方がどうにかしちゃったのかもしれない。

転校して二か月も経っていないのに、あんなに好きだった潤くんがアタシの中から消えようとしているなんて。

こんなに薄情な人間だったのかな、アタシ。

こんなに酷い人間だったのかな。

潤くんが言った通り、離れちゃったら気持ちまで通わなくなるのかな。

―――ホテルの前には、旬磨先輩の姿があった。

ガードレールに寄り掛かり、うつむいていた。

「旬磨先輩…。」

待っててくれたのかな、アタシを??

驚きを隠せなかった。

一方的に切られた、さっきの電話で怒られせてしまったのではないかと思っていた。

潤くんと会っていた事を言えずに来てしまった。

「じゃあ、ここで。」

潤くんも、先輩の姿を見ていた。

「風邪引くなよ。」

優しく笑う、潤くん。

「万桜!!」

潤くんが体の向きを変えようとした、まさにその時旬磨先輩が叫んだ。