『先に行ってて下さい』

そうヒロに言ったらしく、嫌な予感がした。

「俺、マネージャー待ってるわ。」

じゃ俺も、とヒロも座った。

ちょうどトイレの前で、自動販売機や長椅子がある。

「万桜、絶対迷うよな。」

万桜は、ものすごく方向音痴だから。

最初はわざとかと思うくらいだった。

バスの乗り換え場所も覚えていない、トイレから出たらどっちの方向から来たか覚えていない。

「ま、当然だろうな。」

ヒロも呆れ顔だ。

俺達が座った所からちょうど万桜の後ろ姿が見える。

壁の全面がガラス張りになっていて、外の景色が見えた。

万桜はベンチに座っていた。