眠かった。

先輩達とのデート??の後、遅くまで亜子の部屋で話していた。

亜子がとても嬉しそうで、アタシも楽しかった。

「万桜、明日の家庭科の材料用意した??」

食堂で亜子が聞いてきた。

家庭科??

「やばい!!」

部活やなんやらで、すっかり忘れていた!!

眠気はどこかに飛んでいく。

明日は一年生の全クラスの女子だけで、家庭科の授業でクッキーを焼く事になっていた。

生地を作り焼上げ、ラッピングをして提出しなければならない(先生が見たら返却してくらるみたい)。

学校で用意する物の他に、味や形は自由な為チョコレートやラッピングの袋などを自分で用意しなければならなかった。

「ごめん!!昨日のうちに言っておかなくて!!」

亜子は顔の前で両手を合わせる。

「亜子、どこかお店教えて!!アタシ放課後買って来なきゃ。」

教室に戻り、亜子に地図を書いてもらう。

「で、万桜は誰に渡すの??」

「…渡す??」

あ、と亜子は顔を上げる。

「そうだよね、万桜知らないか。」

ふふっ、と笑いながらまた地図を書き続ける。

「あのね、明日の授業でクッキー焼くでしょ。それを好きな人やお世話になっている人に渡すの。」

ほとんどは彼氏や片思いの相手に渡す、という。

この授業は一年生だけにあるもので、今の三年生がこんな風に『誰かに渡す』という事を始めたらしい。

その日は一年生が二、三年生の教室に行っても女子の先輩は大目に見てくれるという。

「少し早いバレンタインデーみたいでしょ。」

へぇ、手作りクッキーで愛の告白をしたりするんだ。

何だか、おしゃれなイベントだな。