「すいません、今ご案内しまーす!!」

この人はボーイ役だろうか、銀色のお盆を脇に挟んでいる。

「ご指名はいますか??」

アタシに聞く。

「……いえ…。」

「そうですか、では今満席なので、少々お待ち下さい。」

呼び止めておいて、いっぱいだから待てって…。

心の中でため息をつきながら教室の中を見回す。

「あの、アタシ結構です。ホント帰ります!!」

彼に背中を向けた。

「ハジメー!!ここー!!」

教室中に声が響く。

「OK!!こちらへどうぞー!!」

ハジメと呼ばれたボーイさんはアタシの手首を取り、声の方へ連れて行く。

「あの、アタシ本当に結構ですから…。」

アタシはここから出たかった。

知らない人達ばかりでこんなトコ苦手。

「ラッキーですよ、彼ナンバーワンの旬磨(しゅんま)ですよ。」

アタシの考えなんて構わずにそう言う。

立ち止まった先には、黒いスーツに、ボタンも止めず胸元が見えそうな真っ赤なシャツが見えた。