「笑っていられるとでも……?」


相性が悪いのか、瀬畑はまた千葉の兄を睨む。


「傷付いた女子高生を見たかった悪者は死に、誰かを傷付け、痛みを感じたかった狂人は自殺。そして弟は目を覚ました。ハッピーエンドだろ」
「事件の内容はトラウマになるんだよ、兄貴」


千葉はため息をつきながら言った。


「なるほど、それもそうか」


理解したようなことを言うが、千葉はわかってもらえたようには感じなかった。


「でも、お前が起きたってのに、笑顔がないのは変だろ」


千葉は言うと思ったと言わんばかりに頭を抱えた。


「兄貴、ちょっと席外してくれ」


言われるがまま病室を出る。


「ごめんな」


ドアが閉まったことを確認すると、千葉は三人に謝った。


「いや、お兄さんの言う通りだと思う。今は、千葉が目を覚ましたことを喜ぶべきだ」


小河がそう言うが、上手く笑えている者はいなかった。


「……とりあえず、目が覚めてよかったよ。また来る」


居心地が悪くなったのか、野田はそう言って病室を出る。


「じゃあね」
「安静にしてろよ」


そして小河、瀬畑も帰っていった。


一人になった千葉は、窓の外を眺める。


「……血、綺麗だったな」


静かに、そう零した。