千葉は嫌そうに返事をし、体育倉庫に向かう。


「おい、俺も行く」


すると野田が追いかけてきて、肩を掴んだ。


「なんで」
「サボれるだろ」


まるで野田を軽蔑するかのような目をしているが、内心、野田が一緒なら安心だと思っていた。


「そういえばさ、女子が昼休みに噂、話してたじゃん。なんであの倉庫にあんな噂が立ったんだろうな」


追いかけて来た野田は、頭の後ろで手を組みながら、足を進める。


「昔あの倉庫で自殺した女子生徒がいたって、兄貴が言ってた」
「出た、定番」
「だろ」


二人はその噂を流した人物を嘲笑うかのように鼻で笑った。


「もともとはその女子生徒の幽霊が出るって言われてたんだけど、いつの間にか、入れば呪われるって言われるようになったんだと」
「へー」


自分でこの話題を持ち出したくせに、野田は興味なさげに答えた。


そんな会話をしているうちに、二人は体育倉庫の前に着いた。
千葉は躊躇することなく、ドアを開ける。


「うわ、暗っ」


誰も近寄らないから電気はつかないし、とても埃っぽい。


ついてきただけの野田はドアが開いた瞬間に言い、ドア付近に立って中に入ろうとしない。
一人で入った千葉は、ときどき咳き込みながら、ハードルを探す。


見付けて手に取ったとき、部屋の隅でガタン、と物音がした。